アルブレヒト・ウィルヘルム・トロニエ(Albrecht Wilhelm Tronnier)とは ドイツの天才レンズ設計者

アルブレヒト・ウィルヘルム・トロニエ(Albrecht Wilhelm Tronnier)とは ドイツの天才レンズ設計者

アルブレヒト・ウィルヘルム・トロニエ(Albrecht Wilhelm Tronnier)とは ドイツの天才レンズ設計者

アルブレヒト・ウィルヘルム・トロニエ(Albrecht Wilhelm Tronnier)とはドイツの天才レンズ設計者である。トロニエ博士が在籍していた光学メーカーと設計した代表的なレンズを列挙する。

シュナイダー・クロイツナッハ(Schneider)と傘下イスコ(Isco)時代

トロニエ博士は当初シュナイダー・クロイツナッハ(os. Schneider Optische Werke GmbH)で勤務していた。シュナイダー在籍時に標準域レンズXenar(クセナー)、望遠レンズTele Xenar(テレクセナー)、広角レンズAngulon(アンギュロン)、Xenon(クセノン)などを設計した。1935年に世界で初めて新種ガラスのランタンクラウンを使用した3群3枚Tessar型のRadionar(ラジオナー、レディオナー)f4.5を設計し特許「U.S.P1987878」を取得した。後にF3.5、F2.9、F2.8が設計された。

ファランド・オプティカル(Farrand Optical Company)時代

次にトロニエはアメリカのファランド・オプティカル(Farrand Optical Company)に移籍して数々の光学系を設計した。

フォクトレンダー(Voigtlander)時代

トロニエは1944年にオーストリアのフォクトレンダー(Voigtlander)に移籍して1953年にTelomar(テロマー)を設計した。その他Color Skopar(カラースコパー)、Skoparon(スコパロン)、Color Heliar(カラーヘリアー)、Apo-Lanthar(アポランター)、Ultron(ウルトロン)Nokton(ノクトン)、Dynaron(ダイナロン)など数多くのレンズを設計した。

カール・ツァイス(Carl Zeiss)時代

フォクトレンダーがツァイス・イコン(Zeiss Ikon)に吸収合併されるに伴いトロニエはカール・ツァイス(Carl Zeiss)に異動した。フォクトレンダー銘のUltronとCarl Zeiss銘のUltronがあるのは吸収合併によるトロニエの移籍が要因だ。

トロニエの最高傑作Xenon(クセノン,キセノン)の歴史

20世紀の高速ダブルガウス型レンズのパンテオンでは、SonnarBiotarPlanarなどが広く認知されている。しかし、それらのレンズと同等のスペックを持ちながらあまり知られていないレンズがある。それがXENON(クセノン,キセノン)だ。

このレンズは1925年に「Dr. Albrecht Wilhelm Tronnier (1902-1982)」 が発明した。当時トロニエ博士は、シュナイダー・クロイツナッハで知られるドイツのバート・クロイツナッハにある「Jos. A. Schneider Optical Works」で光学設計師として働いていた。

現在でも人気も知名度も高いゾナーやプラナー、ビオターなどのハイスピードレンズに比べて認知度は低いが、Xenonの性能の高さとその歴史はオールドレンズマニアとしては学ぶ価値がある。

 

トロニエ博士は、同じ時代のレンズ設計者であるビオターを発明したウィリー・ウォルター・メルテ博士やゾナーを発明したルートヴィヒ・J・ベルテレ博士らより知名度が低く、その名声は彼ら程高くはないが、24歳という若さでXENONを発明し、通算で360を超えるレンズの特許を取得するなど凄まじいキャリアを築いたレンズ設計史に残る偉人である。 

Xenonは、ZeissのBiotar/Planar/Sonnarなどのレンズに似た非対称ダブルガウス型のレンズ設計に対するSchneider-Kreuznachのレンズ名の呼称であると言える。1900年、Zeissは競合他社と区別するために無収差レンズをProtarと命名し、競合他社からの妨害を避ける為に「Protar」というレンズ名を商標登録した。

その後、全てのドイツのレンズメーカーは信頼性を高め、発明を保護する為に、レンズに疑似科学的な名前を付けるという商標登録するという行いを真似した。 

 

Tronnierがレンズ名を「XENON」と命名した由来は、原子番号54の「Xenon原子」、ギリシャ語で「未知」を意味する「Xenos」だと言われている。このネーミングは現代の車の名前の由来と同様の方法で付けられたと考えられる。

商品名はマーケティングの観点から見ると響きが良くスペルや発音が簡単であることが重要。しかし、日本人がレンズの開発、製造を強化すると、デザインに名前を付けるプロセスが遅くなるか停止し、レンズ名にはメーカー名と焦点距離と最大口径などの仕様の数値のみが与えられる。

 

1924年、当時22歳だったトロニエは、ドイツのクロイツナッハにあるSchneider Optik Worksにチーフ レンズ デザイナーとして入社した。前年アーネマンで働いていたルートヴィヒ J. ベルテレと A. クルハルトは、6x4.5cm中判アーネマン エルマノックス プレート カメラで当時前例のないF/2の速度を誇ったアーノスターエルノスター型レンズのリリースでレンズ業界に衝撃を与えた。

この高速レンズの速度と機能は、写真家が屋内や暗い場所での撮影を可能にすることで写真に革命をもたらした。カメラマンのエーリッヒ・ザロモンは、このレンズを使って屋内で素早く写真を撮影でき、誰にも気づかれずに撮影する隠し撮りスタイル、スナップ撮影というカテゴリを生み出した。ザロモンは最初のパラッツォ呼ばれることもあり、写真界に多大な影響を与えた。 

 

トロニエはErnostar(エルノスター)に匹敵する明るいレンズを開発するという試練を与えられた。彼は、1920年にイギリスのテーラー ホブソンの HW リーによって発明されたOpicレンズの光学設計の要素をいくつか取り入れた。

Opicの誕生により、1896 年以降のZeiss Planarの対称構造を崩壊させ、対称ガウス設計で球面収差、色収差、像面湾曲収差を低減した。トロニエはOpicの非対称設計を採用したが、彼の目標を達成するためには6枚のレンズを作成する必要があった。

しかし、与えられた課題である速度を達成する為には前部要素を湾曲させる必要があり、これにより屈折率が増加し各要素から大きな収差が生まれた。

 

トロニエはプロジェクト開始から3年後の1925年にプロジェクトを完了し、Xenon 50mm F2 の特許を取得した。Xenon F/2 は、4群6枚のレンズ構成で非対称のDouble-Gauss型の設計であり、ドイツの特許番号「DE 439556」でOpicに相当する。 

トロニエがキセノンの開発に使用した方法、特に接合レンズを1つのグループに分割し、5~6枚のレンズ エレメントを使用する方法は、今日でも使用されている高速レンズのソリューションを先取りしていた。

第二次世界大戦後、トロニエは英国占領軍によってフォクトレンダーのチーフ デザイナーに任命された。その後、Ultron F2、Nokton F1.5、Color-Skopar F2.8、Bessa II 用の Color Heliar F/3.5、Ultragon、Skopargon、Dynarex、Skoparex など、数多くのレンズを設計(監督)した。

 

そして有名な「APO-LANTHAR(アポランター)」しかし、クセノンが市場に投入される前、1931年に、ツァイスがエルネマンを吸収した後ツァイ​​スで働き始めていたルートヴィヒ J. ベルテレがゾナー型レンズを開発し、Sonnar 5cm F1.5として一般に公開された。

1932年にツァイス コンタックス I に F1.5 レンズが搭載された。Sonnarは画期的で、3群7枚のレンズ設計は商業的に大きな成功を収めた。 

 

Leica IIIa 35mm カメラでZeiss Contaxの新進気鋭のライバルだったLeicaは、Sonnarに対抗するために苦手としていた明るいレンズを必要としていた。そこで、エルンスト・ライツはシュナイダー・クロイツナッハと協力して明るいレンズを作成した。

テーラーホブソンの英国特許 373950 と米国特許 2019985 を参照するライツ キセノン 5cm F/1.5 レンズは、元々シネマレンズとして設計され、1936 年から製造された。 

 

ライツ ズミルックス 50mm F/1.5 (1959 年) の最初のモデルは、断面がキセノン/ズマリットと同じだったが、新しく発明された高屈折率のランタン ガラスを使用している為、以前のレンズよりも改良されていた。 

1962年に導入されたズミルックスの第二世代のバージョンは、ミッドランドにある E. ライツ カナダのマンドラー博士による最初のバージョンのズミルックスの再設計だった。現代のライカ ズマリット 50mm は、ツァイス ビオターのデザインによく似ている。

ライカは2003年に浮動要素とエキゾチックなガラスを組み込んだ Summilux ASPH FLE レンズを発表するまで、Summilux よりも大幅に優れた性能を備えたレンズを提供できなかった。

参考文献:A History of the Xenon Lens , アイキャッチ画像転用元:M42 Mount Spiral

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