Heliar(ヘリアー)とは | フォクトレンダーのトロニエが設計した3群5枚のレンズ構成
Heliarとは3群5枚というレンズ構成の名称
Heliar(ヘリアー)とは、西暦1900年にフォクトレンダー(オーストリアで創業してドイツに移転)が開発して製品化した3群5枚のレンズ構造の名称で、写真用単焦点レンズの名称にも使用されている。
その中でも私が今欲しいレンズはオールドレンズではなく現行のコシナ製フォクトレンダーHeliar Classic 75mm F1.8とHelliar Classic 50mm F1.5(3群6枚)だ。どちらも強烈なクセ玉として人気が高い。
そもそもヘリアー型レンズの明るさの限界はF2.8だと言われている。この2本のレンズはその限界値を超えた明るさを無理矢理持たせた為、諸収差が残存している。
もちろんこれは意図的で、コシナフォクトレンダーの開発陣が収差を愛するレンズ愛好家たちの期待に応えて、敢えて収差を残した設計開発し、我々を楽しませてくれている。
追記:後日(2024年8月)購入したHeliar 40mm f2.8はクセ玉感はあまりなくシネレンズに近い描写でモノクロが超絶かっこよくて気に入った。好みは変わる。
Heliarの歴史
3群5枚のHeliarは3群3枚トリプレットの発展型で、1900年にフォクトレンダーの光学設計師Hans Harting(ハンス・ハルティング)が設計して独特許(DE124934)を取得している。
HELIARは3群5枚と少ないレンズ構成だが、現在でも通用する優れた描写力を持ったフォクトレンダー伝統のレンズ構成。当時のヘリアーは新種ガラスを使用しクック・トリプレット3群3枚のうち前群と後群を張り合わせにした3群5枚の光学設計で、豊麗な描写で有名だった。
写真館では家宝のように大切に扱われ、袱紗に包んで家族にも触らせなかった写真師がいたという逸話も残っている歴史的銘レンズである。
天才レンズ設計師アルブレヒト・ヴィルヘルム・トロニエがヘリアーを元にアポランターを開発
1935年にカラーフィルムが誕生したことにより、白黒フィルムよりも忠実に光を捉える必要性が生じた。そしてHELIARの誕生から51年後の1951年、天才レンズ設計師アルブレヒト・ヴィルヘルム・トロニエが新種ガラスの採用によりHELIARと同じ3群5枚構成でHELIARを超える性能を持つレンズ「APO-LANTHAR(アポランター)」を開発した。
「APO」はアポクロマート設計されたレンズで、この技術は光の3原色であるRGBをそれぞれ異なる波長(振動数)に起因する軸上色収差を限りなくゼロに近づけることでより高次元の色再現度が得られる。
120年前に設計されたヘリアー型レンズ構成は現在でも優れた描写力を発揮
フォクトレンダーのAPO-LANTHARの歴史もHELIARが起源。ヘリアーの3群5枚という伝統的レンズ構成は、2022年8月時点で現行レンズとして発売中のHELIAR Vintage Line 50mm F3.5 VMにも採用されていて優れた描写力を発揮している。
HELIARレンズは昭和天皇の御真影を撮影していて、昭和時代には営業写真館にも飾られ、豊麗な描写力から家宝として扱われるほど絶大な支持を得ていた。
フォクトレンダーでヘリアーの記念モデル発売
2002年にヘリアー登場101周年記念として、3群5枚中玉凹レンズの基本構造を踏襲した35mmフィルム判初のヘリアー50mmF3.5が限定生産で販売された。2006年フォクトレンダー250周年記念では、ヘリアー初のF2.0を実現したヘリアークラシック50mmF2が限定生産カメラセットとして製造販売された。
2014年には35mmフィルム判の交換式レンズ初となる焦点距離のヘリアー40mmF2.8が発売された。10mmや15mmのレンズ構成は10枚以上なのでヘリアーではないのだが、メーカーとしてはヘリアーイムズを継承しているから「ヘリアー」冠を与えたはずだ。要確認である。
参考文献: とるなら写真道楽道中記 , アイキャッチ画像転用元:コシナフォクトレンダーHeriar50mmF3.5
まとめ
現在でもヘリアー型レンズは人気が高い。昔のヘリアーは個体数が非常に少なく、あったとしても状態がいいレンズは少ないしとても高価だ。しかし、コシナフォクトレンダーの現行モデルのヘリアーシリーズは新品もあり、中古も状態がいいものが多い。
高描写だけの現行レンズに不満を抱いているがオールドレンズは敷居が高いし状態が悪いものは敬遠したいけどオールドレンズらしい描写と現代の高描写も楽しみたいという欲張りさんは、コシナフォクトレンダーのヘリアー型レンズをチェックしてみてはいかがだろうか。
コシナフォクトレンダーで収差が一番強くオールドレンズテイストが強いレンズHeliar classic 50mm f1.5が欲しくてたまらない。他にも欲しいレンズが多すぎて沼に沈み過ぎてむしろ浮上しないつもりでいる。
最後、追記になるが、後日(2024年8月)購入したHeliar 40mm f2.8はクセ玉感はあまりなくシネレンズに近い描写でモノクロが超絶かっこよくて気に入った。好みは変わる。作例も紹介しているのでそちらも是非見て欲しい。
今回は以上。本日も素敵なオールドレンズライフをお過ごしください。