KMZ PO2-2M 75mm F2 Review作例 ロシア製おすすめ神シネオールドレンズ 銘玉スピードパンクロコピー
KMZ PO2-2M 75mm F2 Review作例 ロシア製おすすめ神シネオールドレンズ 銘玉スピードパンクロコピー。
PO2-2M 75mm F2を簡単にいうと
PO2-2M 75mm f2は1948年に旧ソ連のKMZ(クラスノゴルスク工場)製でAKS-1やKS50Bなどの35mmフィルムムービーカメラに搭載されたシネマ用望遠レンズ。POはアルファベットでROなので本来はRO2-2M 75mm f2。
本レンズはCook社のSpeed Panchroの光学を忠実に模写して製造されたコピーレンズ。KMZ社がコピーレンズだと公式HPで公表している。硝子硝材が同一か不明だが、光学レンズ構成は精工にコピーされている。
スピードパンクロコピーはPO3-3MでPO2-2Mは光学レンズ構成そのまま焦点距離を長く伸ばしたモデル。スピードパンクロに75mmは存在しないので厳密にはスピードパンクロコピーでないが、スピードパンクロにはない中望遠でフルサイズミラーレスカメラでケラレなくスピードパンクロの写りを楽しめる。
数万円でパンクロの写りを楽しめる貴重な選択肢。OCT-18マウントなのでマウント改造するかマウント改造済みの個体を狙うといい。
PO2-2M 75mm F2とは深堀り
ロシア本気のシネレンズ KMZ PO2-2M 75mm f2とは戦後に旧ソ連(ソビエト連邦)が本気で製作したビームが通過するダブプリズムを搭載した4群6枚対象型ダブルガウス型のシネマ用レンズ。
遡ること1920年Taylor & Hobsonのレンズ設計士H.W.リーがPlanarの対称型ダブルガウスの設計を元に対照型を僅かに崩したOpic 5cm f2を開発した。1931年そのOpicを元にシネレンズCooke Speed Panchro(スピードパンクロ)を開発してハリウッドなど世界の映画界を座巻した。タイラー社はカメラレンズの製造をしていなかったのでCookeに製造を依頼した。
当時のハリウッド名だたる大手映画制作会社ユニバーサルスタジオやMGM、ユナイテッドアーティスツなどがこぞってスピードパンクロをシネマレンズとして採用していた。
当時、KMZ(クラスノゴルスク機械工場)は第2世代の光学機器の主要メーカーだった。旧ソ連やU.S.A(アメリカ)、U.K(イギリス)、France(フランス)などの連合国軍は、第二次世界大戦で日本、ドイツ、イタリアなどの枢軸国に勝利した。
そして、その戦利品としてドイツの東側をロシアが統治し接収、アメリカとイギリスが西ドイツを統治し接収した。ロシアはドイツ人から全ての情報と工作機械を接収した。KMZはレンズ光学の主な開発者および製造者になった。
KMZは戦時中に限られた数のFEDカメラを生産し、戦後は輸出用のメーカーに選ばれた。KMZもまた独自の製品を開発し、引き渡し前に試用バッチを作成した。他の工場での生産は1949年以来有効になった。
PO2-2M 75mm F2とPO3-3M 50mm f2のレンズ構成は同一
PO3-3M50/2とPO2-2M75/2はレンズ構成が同一だ。PO4も似ている。これらのロシア製レンズは、伝説的シネマレンズのスピードパンクロやキノプティックのコピーではないかと噂され、オールドレンズマニアの間で注目が高まった。
PO2-2M 75mmとPO3-3M 50mmとPO4-1 35mmのどれがおすすめ?
結論、全部購入したが、どれもおすすめだ。35mmと50mmはフルサイズで四隅がけられるが、筆者はかっこいいケラれは好きなので表現として作風に取り入れてしまう。気になる場合はAPS-Cモードにクロップして使用するといい。
もし、フルサイズ画質のまま使用したいのであればPO2-2M 75mm F2がおすすめ。このレンズは35mm判フルサイズのイメージサークルをカバーするので焦点距離75mmのまま中望遠レンズとして利用可能。若干の周辺減光はあるが中央部は開放から高画質でシャープで周辺部は甘い。
そこにアンバー系の色かぶりやグルグルボケが加わり、高描写なのにノスタルジックでエモいオールドレンズテイストが存分に味わえる。ロシアレンズの醍醐味を実感できるおすすめのオールドシネレンズだ。
ロシア製のコピーレンズはKMZ工場で製造していた
PO2、PO3、PO4などのシネレンズだけでなくCarl ZeissのSonnarやBiogon、Topogon、LeitzのElmarなどのデッドコピーもKMZの製造ラインで生産されていた。旧ソ連製のシネレンズは元々ロシアのレニングラード州にあるKINOOPTIKAファクトリーが1945~1947年の3年間の間に1000本のレンズを生産したのが始まり。旧ソ連は第二次世界大戦の賠償としてドイツから接収したガラス硝材をレンズの製造に使用していた。
その後、レニングラードの生産ラインはKMZ(クラスノゴルスク工場)の393番プラントに移され、国産ガラスを用いた製造に切り替わった。393プラントではPO2-2の姉妹レンズであるPO3-3 50mm F2やPO4-1 35mm F2も一緒に製造された。
このプラントでは他にも、ZeissのSonnarのデットコピーZK-50(Jupiter8 50mm f2)やBiogonのデットコピーBK-35(Jupiter12 35mm F2.8の前身)、LeitzのElmar50mm f3.5コピーのFED(Industar22)、ドイツ・ワイマール時代にツァイスから技術提供を受けて開発されたTopogonコピーのOrion15 28mm f6なども製造されている。
いわばKMZの393番プラントはコピーレンズ製造ラインだった。当時のKMZでレンズ光学システム設計局のリーダーはインダスター22やジュピターの設計を手がけたM.D. Moltsevで、彼は1948年にKMZの局長に就任している。
KMZはシネレンズの他にシネマ用カメラもコピー製造していた
POシリーズを搭載した映画用カメラ「KS-50B」や「AKS-1」は米国の「Bell & Howell(ベル&ハウエル)社が開発した「Eyemo(アイモ)」という映画用カメラをコピーした模造品であるとKMZ(現ゼニット社)が公式ホームページに普通に記載がある。
戦前のアイモにはスピードパンクロが正式採用され、1940年代のハリウッド映画では撮影に使われたアイモの半数以上にスピードパンクロが搭載されていた。このことからもわかるように、ロシア版のアイモに搭載されたPOシリーズがカメラ同様にスピードパンクロをコピーしたと考えるのは自然な発想である。
スピードパンクロとPO3(PO2)はレンズ構成が酷似
PO3-3の第2群に見られるレンズ構成は非常に特徴的で、これはスピードパンクロのシリーズ1にしか見られないものだった。PO3-3とスピードパンクロの各部位の寸法を図面で照らし合わせると、前玉径や全長、焦点距離などの主要部が1mm以内の誤差で合致する。ただし、両レンズのガラス硝材は比較されていない。PO2-2 75mm F2はPO3-3のレンズ構成と同一で、前玉径と後玉径と焦点距離はそれぞれPO3の1.5倍。その一方でPO2-2はスピードパンクロのシリーズ1の75mmF2を参考にしたと考えられることもできるが、レンズ構成は明らかに異なる。
PO2-2 75mm f2はノンコートとコーティングありのモデルが存在
KMZが1948年に発売したPO2-2の最初のモデルの鏡胴は真鍮製で、ガラス面はコーティングがないノンコートと、青色のコーティングが施された2種類のモデルが存在する。生産本数はノンコートが500本でコーティングありは1500本。1951年には新しいモデルとしてガラス面にマゼンダ色のP(Prosvetlenije)コーティングが施された。また、1952年からはアリフレックス35のロシア版コピー、KONVAS(OCT-18マウント)へのレンズの供給も開始された。
PO2-2M 75mm f2 のレンズ構成は4群6枚のシンプルなダブルガウス型
PO2-2のレンズ構成は4群6枚でスタンダードな準対称のダブルガウス型で、2群目の貼り合わせが特徴的で、凸メニスカスと凹メニスカスの貼り合わせになっている。この時代のダブルガウス型の主流は両凸レンズと両凹レンズの貼り合わせだった。
ダブルガウス型で第2群の貼り合わせが凸メニスカスと凹メニスカスの貼り合わせのレンズが登場したのは戦後間もなく登場したFlexonや同一設計であるPancolarからで、戦前でこのレンズ構成はほとんど見られなかった。
貼り合わせレンズの凸部は分厚く作られ、球面収差を徹底除去する構造となっている。映画用シネレンズで求められる高い画質基準を実現する為、口径比は無理のないF2に設定された。
ここからロシアKMZの資料を翻訳してまとめた記述をする。早くレンズ外観や作例が見たい方は飛ばしてください。
KMZ PO2-2M 75mm f2の仕様と付属カメラや特徴
PO2-2M(2/75)レンズは、大口径、光学設計は4群6枚構成、アナスチグマット、レンズにはコーティングが施されている。このレンズは35mmフィルムで動作するプロのフィルムカメラ用に設計された。フレームサイズは16×22mm。カメラ「Konvas-automatic(KSR-1M、KSR-2)」用のフレーム。
レンズはフレームに固定されていて、フレームにはレンズを固定するラッチがある。カメラ、レンズのフォーカスリング、絞りリング。フレームには距離の目盛りと開口の目盛りがある。初期モデルのF2.0~F32までの絞りは黄色、後期モデルのF2.5~F32までは赤色。
PO2-2Mにはレンズフード用のフレームが付属してあり、必要に応じて金属を取り外して使用することができる。レンズ内側のハーフリング。スクリューオンとスリップオンの両方のアタッチメント(ライトフィルター、サンフード)。
カメラの外側では、レンズは保護キャップで保護されている。初期のモデルのチューブは、グレーとグリーンの2色のカラーバリエーションが存在する。
KMZ PO2-2M 75mm f2の用途
PO2-2M 75mm f2 は カメラ KSR-1Mに装着された。KSR-2は大口径と高解像力で高性能なレンズを使用することができ、PO2-2Mは長編映画、ドキュメンタリー、スポーツ番組などを製作する他、様々な撮影に使用された。
PO(RO)2-2とPO(RO)2-2Mの違い
PO(RO)2-2は1945年から1948年にかけてKinooptikaがレニングラードで特別に洗練されたドイツの光学ガラスを使用して1000本のみ製造された。このレンズは製造と研磨が複雑だった為すぐに製造中止になった。使用も限られていてAKS-1カメラにのみ付属する。
そして1948年、レニングラード工場は光学ソリューションとレンズ研磨機をKMZに納入した。PO(RO)2-2Mはプロのムービーカメラ用に設計されて1949~1950年にかけてKMZ(クラスノゴルスク機械工場)で1500本のみ製造された。
しかし、高い製造コストと特殊な化学コーティングの為レンズは製造中止になった。
1951年、PO(RO)2-2Mの廉価版低スペックモデルPO(RO)2-2がKMZで500本生産された。RO2-2はコーティングされていない為、映画を撮影する監督から人気はない。同1951年、新しい紫色のコーティングが施されたRO2-2pとRO2-2Мp(pはコーティングの略)という2つの安価な価格のレンズが生産された。
この新しいコーティングはRO2-2Мコーティングの反対作用で画像をそのままレンダリングして画像に黄色味を加える。RO2-M等の絞りはf2だがRO2-2МPの絞りはf2.5。
LOMOとLenkinapによる新しいレンズのリリースに伴いRO2-Mレンズの生産は中止された。同社は低価格で需要の高いBiotrar/Gelios-40の光学ソリューションを採用した。
参考文献:iMedia
PO2-2M 75mm f2 の主なスペック技術資料
- 反射防止コーティングあり
- 焦点距離:75.1mm +-1%
- 絞り値:F2~F32
- 画角:25度
- 作動距離:57 +-0.01
- 前焦点距離:-25.98
- 後焦点距離:48.94
- 光透過係数:0.81
- 分解能:lin/mm
- 中心:45
- フィールドの端:25
- フォーカス限界:1 からbesまでのm
- 光学レンズ構成:4群6枚左右対称ダブルガウス型
- 第1面の光の直径:37.5mm
- 最後の表面の光の直径:36.0mm
- 絞り羽根枚数:16枚
- フレームの最大直径:60mm
- キャップを含むフレームの長さ:126.5mm
- フィルター径:47mm
- ノズルの着陸寸法:ねじ込み式 SpM45 * 0.5
- 直径:60mm
- 重量:371g (マウント改造後381g)
PO2-2MレンズはKMZ機械工場で製造され、PO2-2はKMZとキノオプティクスレニングラード両方によって製造された。PO2-2では2つの変更があった。
PO2-2MからPO2-2の変更点
PO2-2MからPO2-2の変更点
- KMZクラスノゴルスク機械工場im。S.A.ズベレフ、クラスノゴルスク。KMZ初のプリズマダブの刻印。オリジナルは1942年以来、植物の記号(完全な記号は鎌と五芒星とハンマーが刻印されている)。他社のカメラを購入するために生産されたレンズ(アーセナル)は、工場のブランドであるZORKIYでのみ刻印することができる。
- 「Kinooptika」レニングラード。このモデルは最も珍しいと考えられている。
PO2-2のスペック技術資料
- 反射防止コーティングなし
- 焦点距離、mm 75.1+-1%
- 相対絞り 1:2
- 画角 22.40 度
- 画像フォーマット 18*24
- 絞り限界 1:2 - 1:32
- 作動距離 57+-0.01
- 前焦点距離 -26.2
- 後焦点距離 49.1
- 光透過率81以上
- 分解能、lin/mm
- 中心に 30
- フィールドの端に 15
- フォーカス限界、1 から bes までの m
第1面の光の直径:37.5mm
最後の表面の光の直径:36.0mm
寸法:f58mm*69mm
レンズフード付属
PO2-2は撮影に使用される。フィルムカメラにPO2-2を採用。
KS505、空撮フィルムカメラ AKS-1
KS505
AKS-1
最新のデジタル一眼レフへの適応は非常に困難。
資料翻訳まとめは以上。
PO2-2M 75mm f2オールドレンズ外観Review
ロシアの KMZ PO2-2M 75mm f2 を同じくロシアの Industar103 53mm f1.8 でブログ用に物撮り。撮影機材カメラはSony α7C。F5.6に絞って撮影。レンズの重量の実測値は381g、焦点工房のL/Mヘリコイド付きアダプター装着した実測値は469g。開放から数段絞っているが、やはり昔のレンズは写りが優しいものが多い。
ついでに開放でレンズの写り具合を確認。インダスター103 53mm f2のマウントは旧コンタックスCの内爪と珍しいマウントなので自家製改造のヘリコイド付きアダプターを海外から輸入したが、本当は昔焦点工房が販売していたものが欲しい。
レンズは年期が入っていてかっこいい。シネマ撮影に使われてきたんだな。ヘリコイドや絞り環の動きはスムーズ。
絞って上から。料理の物撮りかよ。撮ってる機材もロシア製オールドレンズだが、いい味出すでしょ。
中望遠だけあってサイズ感はまぁまぁだけど感覚としては軽い方。
シリアル見ると製造は2001年?ん?プロトタイプか?
ではお待ちかねの作例どうぞ。
KMZ PO2-2M 75mm F2の作例レビュー
撮影機材はSonyのフルサイズミラーレスカメラ α7Ⅳ。いつも通りレンズの素性を探る為基本jpeg撮って出しでクリエイティブルックはNTかST。近所の公園で試写。
花壇のマリーゴールドに蝶がとまって蜜を吸っていた。かわいい。静かにしゃがみ込みサイレントシャッターを切る。開放でうっすら滲む。焦点工房のヘリコイド付きアダプターで寄っている。ボケ崩壊。これが旧ソ連の本気のシネレンズ。超絶エモい。
背景のボケが大きな玉ボケのようになっている。幻想的(Fantastic)で絵画的(Pictorial)。パンクロコピーか、なるほど。と唸る。
現実の世界ではないような芸術的な写りをする。ファンタジーに豹変する。
これだから写真はやめられない。もはや絵画。
太陽の角度の影響かゴーストは出にくかったが、それはそれで他のことに集中できる。
グルグルボケというか暴れ回ってる感じ。
マリーゴールド1輪でこれだけ遊べる大人って…。開放F2。
1段絞ってF2.8。
2段絞ってF4。
3段絞ってF5.6。絞ると2線ボケが目立つが後ろのマリーゴールドのボケ方が怪しくセクシーな雰囲気を醸し出していて好感が持てる。
時間帯の影響で太陽の入射角度が厳しいが虹ゴーストの発生も確認。
モノクロもよき。シャドウがストンと落ちて印象的な写真になった。なお、レンズの特性を確認する為、基本的に加工や編集は行っていない。
といいつつ少しシャドウを持ち上げてみた。撮って出しが好きなの。美人は化粧をしなくてもスッピンで充分かわいいというか。どんな写りをするか知りたい。
疲れてきたので花を前ボケに利用してピントを奥に合わせる。
モノクロで。シャドウを持ち上げたくない。こういう写りなんだよ当時作られたこのレンズは。さすがスピードパンクロを本気でコピーしたシネレンズ。このレンズは以前どんな持ち主がどんな想いでどんな写真や映像を撮ってきたのだろうと考えると感慨深い。
水たまりと落葉。肌寒くなり季節の移り変わりを感じる。
どんぐりと落ち葉。
KMZ PO2-2M 75mm f2で実写した感想レビュー
- グルグルの兆候あり
- ボケが妖艶でノスタルジックという謎に独特な世界観がある
- 美しい虹ゴースト発生
- 玉ボケの輪郭はふわっとしている
- 二線ボケの兆候あり
- ピント面やアウトフォーカスも滲みやすい
- マクロ寄り撮影が多かった影響もあるが全体的にボケが柔らかい
- ボケが暴れて乱れ飛ぶ時がある
- 次は中間距離で写りを楽しみたい
- 超絶エモい
まとめ
先日試写したPrimoplanとはまた違った特徴があり、共産国ロシアの意地を感じる。模倣がうまい。「この写りがスピードパンクロか」と思うとテンションが上がる。むしろ旧ソ連の模倣技術に感嘆する。10分の1の値段でスピードパンクロ気分を味わえるならそれも幸せだ。
とにかく面白い画が撮れたので購入して満足している。沼がやまないのでレンズはレンタルにしようかと思う今日この頃。以上でKMZ(クラスノゴルスク工場)PO2-2M 75mm f2のレビューを終わる。本日も素敵なオールドレンズライフをお過ごしください。