Kodak Ektar 47mm F2 L改 Review作例 コダックRetina滲む銘玉 マウント改造オールドレンズ
Kodak Ektar 47mm F2 L改 Review作例 コダックRetina滲む銘玉 マウント改造オールドレンズ。写りの特徴はグルグルボケ、美しい玉ボケ、崩壊するボケ、キレキレのピント面、色ノリのよさ、ゴーストやフレアーの発生は適切に抑えられ、クセ玉なのに高描写で正統派なエクターらしい世界観を描いてくれる個性ある銘玉オールドレンズだ。
Kodak社のRetinaとは 名機レチナの歴史
Retina(レチナ)を製造したのはドイツ・コダック社(Kodak A.G.)。ドイツコダックは1931年米国のイーストマン・コダック社(Eastman Kodak Co.)とDr.オーギュスト・ナーゲルカメラ工場(Dr.August Nagel Camerawerk)がほぼ対等の条件で合併したことで誕生した。
ナーゲルカメラ工場の創立者、オーギュスト・ナーゲル博士(Dr.August Nagel:1882年-1943年)は、元々ドイツ4大カメラメーカーの1つ、コンテッサ・ネッテル社の創立者の1人。1926年4大カメラメーカーの合併により設立されたZeiss Ikon(ツァイス・イコン)社では技術担当理事だった。
しかし、独立願望が強かったナーゲル博士は1928年にツァイス・イコン社を退社しシュツットガルトにDr.オーギュスト・ナーゲルカメラ工場を設立した。スムーズに3社の合併が成立した理由は、当時ドイツが世界大恐慌の影響を受け、アメリカのナーゲルカメラ工場も経営難により外部支援を必要としていた。
同アメリカのイーストマン・コダック社は高性能カメラの開発拠点をドイツに求めていた。このような経緯から3社の思惑が見事に一致した。米国のイーストマンコダック社はこの3社のうち会社の規模が遥かに巨大だったが、ナーゲルカメラ工場のナーゲル博士の功績を高く評価していた為、ナーゲル博士を新会社の社長として就任させて、ドイツ・コダック社の新型カメラの開発もナーゲル博士主導で行った。
そして、1934年、ナーゲル博士を中心に開発したカメラRetina(レチナ)が誕生した。レチナはラテン語で「網膜」という意味。レチナは小型軽量で機能的でデザインも洗練されて美しく、よく写るカメラとして大成功を収めた。
レチナの登場と同時にイーストマン・コダック社はフィルムを専用カートリッジに詰め替えせずに、フィルムを購入してすぐ撮影が可能な「パトローネ方式」を開発した。つまり、レチナは最初にパトローネが使用できるカメラとして35mm判フィルムの普及に貢献した。
ナーゲル博士は第二次世界大戦中の1943年に亡くなり、彼の一族であるヘルムート・ナーゲルが後を継ぎ、戦後のレチナシリーズをさらに発展させた。レチナは1934年に登場した初代の117型から、50種類以上のモデルが存在し、初代の117から現在のパトローネに入った35mmフィルムをそのまま使用できる為、今なお人気が高い。
Kodak Ektar 47mm f2とは 銘玉エクターの歴史
Ektar 47mm f2 はカードンミリタリー(AMERA PH-629/UF)の標準レンズ。カードンミリタリーは、1940年代にアメリカのPremier Instrument社が製造し、米陸軍通信隊(U.S. Army Signal Corps)に供給していたライカコピー機で、マイナス55度から摂氏65度の環境下で実用可能だった。
第二次世界大戦中の1941年、連合国軍であるアメリカは枢軸国ドイツとの戦争でドイツ製カメラの入手ができなくなった。そこでアメリカはこの窮地を乗り切る為に、自国ニューヨーク州にあるエルンストライツを差し押さえカメラを押収。
エクターは、ライカⅢaのカメラを模倣したコピー機として製造した。E.Leitzの下請けであるPremier Instrument(プレミアインストゥルメント・コーポレーション)の社長ピーターカードンは、E.ライツの生産設備ラインを使おうとしたが、修復不能な程爆撃の影響を受けていた。
ライツ製品は熟練職人の手作りで製作されていた為、当時のアメリカの技術では、ライカⅢaを大量生産することは困難だった。そこで、大量生産できるよう新しくカメラを設計し直した。アメリカ版コダック製エクターのレンズを搭載し、カメラ「Kardonミリタリー」として再設計した。
そして、1945年にカードンミリタリーのサンプルが完成したとほぼ同時に第二次世界大戦が終結した。しかし、アメリカ政府は、この技術的な成功がビジネスの成功には繋がらないと判断し、カードンミリタリーの契約をキャンセルした。
これにより、カードンミリタリーは僅か1000数百台が生産されただけで生産終了した。また、カードンには民間向けのシビリアンモデルと軍用のミリタリーモデルが存在する。
軍用のミリタリーモデルと民間向けのシビリアンの大きな違いは3つある。1つ目は、軍用は巻き上げノブが巨大でシャッターボタンは高い位置に設計されている。2つ目は、軍用はカメラの背面に通信部隊名や軍の管理番号が記されたプレートが装着されている。3つ目は、軍用カードンに搭載されたエクターレンズはヘリコイドのギアが正面左下にあるが、民間用のシビリアンはギアが正面左上にある。
Retina(レチナ)はドイツのKodak(コダック)社が1934年から第二次世界大戦後にかけて製造していた35mmビューファインダーレンズシャッターカメラ。RetinaⅡは戦後1946年から1949年に製造された。Kodak Ektar 47mm f2はレチナⅡに装備されたカメラとレンズ一体型のレンズで小型軽量でよく写るカメラとして人気があった。
レチナⅡにはEktar 47mm F2の他にもシュナイダー社のXenon 50mm F2やローデンシュトック社のHeligon 50mm F2が装備されている個体がある。
参考文献:フラッシュバックカメラ , 迷レンズ探訪 , クラシックカメラ修理専門ハヤタ・カメララボ
Kodak Ektar 47mm f2 L改を購入した動機
筆者が本レンズを購入した動機は、澤村徹氏著書のオールドレンズライフという書籍を読み作例を見て、軟調で滲みがある描写に惹かれたからだ。しかし、実際に試写してみたところ、彼の作例のように盛大には滲まなかった。
これは個体差によるものだろう。筆者が所有する個体は光学が感動的にクリアだったので盛大には滲まなかったと推測する。また、古来の一説によると曇り玉の方が光をよく通すという考えもある。
レンズ面の曇りの薄い膜の屈折率の方が新しく磨いたレンズよりも屈折率が低い為である。これについては特許や研究が行われていて、現在の最新レンズがゴーストやフレアを抑えることができるのは光学に反射防止膜のコーティングを施しているからだ。
Kodak Ektar 47mm f2 L改 作例83枚 jpeg撮って出し写りの特徴レビュー
いつも通り未加工jpeg撮って出し。撮影機材カメラはSony α7C。グルグルボケの傾向あり。ピント面はシャープで発色は穏やか。
背筋が凍るような雰囲気と圧倒感。
マクロ域ではやはり周辺が流れる。オールドレンズには収差を求めているので嬉しい。
朝日で玉ボケテスト。輪郭は滲む。真円とは言い難い。
秋の早朝の静けさがよく出ている。
静寂。
朝の希望。シャドウは持ち上げていない。
畑の野菜の葉についた朝露が美しい。
人々はもう起きているだろうか。遠くに見える山が美しい。
被写体がカラフルなら発色は良好。昔は汚いと嫌われていた二線ボケも今や表現の1つ。時代は変わる。ハナウリクサ(花瓜草)、ナツスミレ(夏菫)、トレニア。熱帯アジア原産の一年草で園芸用に改良された。夏に咲くらしいが撮影したのは10月。一年草だから一年中咲くのか?わからない。
逆光態勢は強くゴーストは出にくいが、フレアーは発生する。
今この時を忘れない。
アメジストセージ。近接のボケは柔らかい。
神社の鳥居。神聖な場所。木々は神様。神木とはよく言ったものだ。我々人類の寿命はたかが100年。木は数千年。木々は人類が行ってきた愚かな戦争の歴史をずっと見てきている。
紅葉。桜の葉の色が変わりゆく様が儚く美しい。花が咲いていなくても一年中美しい。
桜の木。朝日。今このつらい時を一生忘れない。
忘れない。
美しいつぼみ。紅葉時は背景のボケが色とりどりになって美しい。
玉ボケテスト。中央部以外はかなり流れる。被写体を中央に置いて撮影するとこのレンズの持ち味を発揮できる。元は軍用の偵察用レンズとして開発されたので納得。私は平和の為に写真を撮る。
本当に美しい。
すすきを前ボケに配置。
葉の葉脈の紅葉が素敵で不思議で童心に帰る。
センダングサ。服にくっつく為、地域により「ひっつき虫」「どろぼう」などと呼ばれる。どこにでも自生するただの雑草に思うが、学名はビデンスピローサといい、宮古島では特産品のお茶として販売されている。民間薬、漢方として糖尿病や肝臓病、リウマチ、花粉症やアレルギー性鼻炎、目のかゆみ、皮膚炎などの症状に効果があるとされている。
ピント面のキレと立体感がある描写、とろけるボケと玉ボケ。発色のよさと発色の淡さが同居。銘玉。
周辺の結像の甘さとボケが交わり滲みも相まって、こんなにクセ玉なのかこのレンズ…と思った。
滲みとフリンジとフレアーでエモい。
叩き出す画の次元が違う。こんなにいいレンズ使ってたら写真が上手くなったと勘違いするからよくないこのレンズ。
結局、どんなレンズでもいいんだと最近思う。大切なのはそのレンズの持ち味をどうやって引き出すか、被写体を見つけてどう表現したいか、その行為の繰り返し。
しかしいいレンズだ。滲みレンズと思っていたが抜けが良すぎて拍子抜けした。個体差が非常に大きいレンズなのかもしれない。
しかしレンズティスティングは楽しい。写真も好きだがレンズティスティングも好き。レンズティスティングをする為に写真を撮るのが好きなのかもしれない。
よき。
筆者お気に入りのオールドレンズの1本になった。これからよろしくね。
グルグルボケも発生。
淡い色もいい表現してくれる。
何を撮っても素敵に写るからある意味面白みに欠けるオールドレンズかもしれない。だってEktar47mmF2だもん。
葉の色づき始めが神秘的。
お気に入りのオールドレンズとお出かけして自然と戯れる。至福の瞬間。
紅葉がきれいだ。目に映るより美しく記憶に残る写真。
アスファルトに落ちた葉。本来地球はアスファルトで覆われていない。本来は土。アスファルトを敷くと地球が呼吸できない。落ち葉は拾って集めて掃除しなくても本来は土に還り大地やその木々の養分となる。人類が車で移動して効率よく物資を運搬する為に自己都合でアスファルトを敷いただけ。地球の仕組みや食物連鎖などの自然の摂理を無視して勝手に自己都合のルールを作り地球を支配する人類が子供の頃不思議でならない。
玉ボケが発生しやすい。レモン型もかわいい。
シックな青空。周辺減光もいい味。
周辺の滲みがいい。
滲み。
収差を愛する人間がいうところの「よく写る」と、高い解像力や収差が極限まで補正されたレンズを愛する人がいうところの「よく写る」は全く別物。
このオールドレンズはもちろん前者の意味でよく写る。
大好きだぜこの収差。
絵画。
同じ構図の3枚、微妙に違う。葉のブレ、滲み具合を見ている。ピント面のシャープさを求めるか、微妙なピントのブレや滲みを優先するか。答えは永遠に出ない。
何かがとり憑いているのか?大歓迎。
茅葺屋根。シャドウの奥に目を凝らす。
迫力あるのに滲みと周囲の結像の甘さでどこか優しい雰囲気になってしまう。
これも。
収差がいい。
グルグルボケ。光源が玉ボケになり周囲はレモン型になりグルグル流れる。トリオプランの輪郭も美しい真円のシャボン玉ボケ(バブルボケ)も好きだが、こういうボケも好きだよ。
枯れた彼岸花(曼珠沙華)。誰も撮らない。人間の身勝手な好き嫌いが垣間見えて悲しい。
木は偉大。
ハマる。最高。
しめ縄の紙垂のハイライトの滲みがいい。
思わず息をのむ。いつからこうして時が止まっているのだろう。異空間だ。
美しすぎるよハイライトとシャドウのトーンとコントラストが。飛ぶ直前のハイライトと潰れる直前のシャドウを見ているだけで酒が飲める。
ボケ防止の薬師如来像。拝んでいいですよ。手を合わせて目を瞑り「オンコロコロセンダリマトウギソワカ」と3回唱えましょう。サンスクリット語。そう、日本を建国したのは大陸から移民してきたお坊さんや宮大工たちです。学校で教えることは戦後禁止されたので普通は皆知りません。
蜘蛛さんとお話した。撮影の許可も取った。「撮っていいよ、見てて~。」って言ってたくさん動いてくれた。
すごくかわいい蜘蛛さんで素敵に輝いていた。またどこかで会えるといいね。
横構図。
縦構図開放と縦構図F5.6。
でかい。
作例は以上。
Kodak Ektar 47mm f2 L改 実写した写りの特徴レビューまとめ
筆者が入手したエクターは運よくレンズの光学の状態が非常に良かった為、抜けのいいクリアな写りに驚いた。筆者が感じた写りの特徴は、中央部のピント面はシャープだが周辺の結像は甘く背景はグルグルボケの傾向があり像が流れる。発色はどちらかと地味な方。逆光体制が強くゴーストは発生しにくいがフレアーは発生する。本レンズは軍用、つまり偵察用として開発されたカメラとレンズなのでこの辺の特徴は当然である。二線ボケ発生。中央部は真円に近い玉ボケが出るが輪郭は滲む。澤村徹氏が本レンズを複数の書籍で滲む銘玉としてレビューしているが、個体差があると感じた。本レンズはあまり滲まない。後玉にポツポツとバルサム切れが数か所見られるがそれ以外は良好。良くも悪くもオールドレンズは1本1本に個体差があり、光学の状態により写りも変わるので、プラスに捉えると個体差は大きな魅力。
最後にエクター47/2の写りの特徴を箇条書きでまとめる。
- 中央部のピント面はシャープだが周辺の結像は甘い
- グルグルボケの兆候あり
- 中央部の玉ボケは真円に近いが輪郭は滲む
- 周辺部の玉ボケはレモン型になりグルグルと流れる
- 発色は地味な方
- 逆光体制が強く虹ゴーストは発生しない(発生しにくい)
- 画面全体を覆うようなフレアーは発生する
まとめ
一番エクターらしいエクター「King of Ektar 44mmF3.5」も玄人染みた描写で好きだが、やはりオールドレンズらしい収差が多く楽しめるのは今回レビューしたEktar47mmF2だ。写りの楽しみ方が若干異なるのでどちらも楽しめるレンズであることに変わりはない。そのうちEktar50mmF1.9も入手したい。今回のレビューは以上。本日も素敵なオールドレンズライフをお過ごしください。