Leitz Elmar 50mm 5cm f3.5 L Review作例 Leicaライカ銘玉オールドレンズ エルマー
Leitz Elmar 50mm 5cm f3.5 L Review作例 Leicaライカ銘玉オールドレンズ エルマー。戦前に製造されたオールドレンズだが解像力は高くモノクロの諧調が豊富で透明感とツヤのある描写で虹ゴーストやフレアー、玉ボケなどオールドレンズらしい収差も楽しめる。被写界深度が深いのでピント合わせが容易でスナップに最適だ。ヘリコイド付きマクロアダプターを装着すればマクロ側の描写も楽しめる万能レンズだ。f3.5という数値に惑わされずにまっさらな目で作例を見てほしい。きっと新しい発見があるはずだ。
Elmar 50mm f3.5 L エルマー50mmとは
Elmar 5cm F3.5は50mmと表記されることが多いがレンズの銘板には「5cm」と刻印されている。そして「cm」ではなく「mm」で表記するなら正しくは51.6mmだ。バルナックライカL39マウントの標準レンズの5cmの焦点距離は全て51.6mm。
ちなみに50mmよりも短い焦点距離の個体は旧エルマーと呼ばれていて使用されているガラスが違う。旧エルマーはZeissのショット製ではなくゲルツのゼントリンガーのガラスを使用している。旧エルマー50mmf3.5の見分け方とレビュー作例はこちら。
しかし、現在はcmと表記することはなく「mm」で統一して記事を執筆する。Elmar 50mm f3.5はライカのレンズ設計士で最終最高責任者Max Berekが設計して1924年に登場したライカを代表する標準レンズで現在のライカの礎を築いた不朽の銘玉だ。
大げさではなくライカ=マックスべレクでもある。1920~1930年代に活躍した写真家たちがエルマーの写りに酔いしれた。この頃のライカのレンズは軍の偵察用だからよく写る。戦後も同様に軍需用として生産された。
ちなみに戦後の米国Kodakの銘玉EktarはElmarの光学レンズ構成をコピーして作られた。だからこちらも同じくよく写るのだ。エルマー50mm/f3.5は1924年~1961年まで製造されて累計365582本が製造された。
製造本数が多い為価格は高騰しない。製造本数が少ないオールドレンズは価格が高騰しやすい。ロシアレンズは製造本数が非常に多い為中古相場は安いのだ。エルマー50mmf3.5の発売当初はライカA型の固定レンズとして登場したが後に交換用レンズとして供給された。
当初はニッケル仕上げで後にシルバークローム仕上げに変更された。シリアルナンバー100万番台以降の個体は被写界深度目盛りが赤字で通称「赤エルマー」と呼ばれる。その他絞り目盛りや最小絞り値、刻印の表示文字、距離調節レバーなどに違いがあり、シリアルナンバー581501以降はコーティングが施された。
Elmarの設計のベースはレンズ構成3群5枚のElmax50mmf3.5。エルマックスは初期のA型ライカとO型ライカ用に作られたAnautigmat50mmf3.5とデザインとレンズ構成ともに同様だった。
ちなみに筆者が所有するレンズのシリアルナンバーは430718で1938年に製造されたと推測される。第二次世界大戦の開戦が1939年なのでぎりぎり戦前に製造されたと推測される。戦火を潜り抜けようこそ我が家へ。
Elmar 50mm f3.5 L エルマー50mmのスペック
- 製造メーカー:Leitz(後のLeica)
- 製造年:1925年~1961年
- レンズ構成:3群4枚Tessar型(Elmar型)
- 絞り値:f3.5~f18(F16,f22)
- 絞り羽根枚数:10枚円形絞り
- 最短撮影距離:1m
- フィルター径:A36→E39
- 重量:118g(実測値)
沈胴式オールドレンズをミラーレスカメラで使用する際の注意点
ミラーレスカメラで沈胴式オールドレンズを使用する際の注意点はボディに装着したまま沈胴させるとイメージセンサーにホコリやグリスなどが落ちて汚れる可能性があるので気を付けよう。イメージセンサーが汚れてブロアーでも取れない場合はSonyサービスステーションに持ち込めば簡易清掃は購入から1年間無料で、有料3000円の清掃コースやその他もイメージセンサー清掃プランがあるのでそんなに恐れることはない。…が、先ほど述べたように沈胴式レンズをボディに装着したまま沈胴させるのはイメージセンサーにホコリやグリスが付着する危険性があるのでやめよう。
Elmar 50mm f3.5 L エルマー50mmのレンズ外観
Leitz Elmar 5cm f3.5をチノン Auto Chinon MCM Macro Multi Coated 55mm f1.7でブログ用に物撮り。レンズの10枚羽根の円形絞りが美しい。工芸品のようだ。
こちらは絞り羽根を全開して開放した。シリアルナンバーから推測すると1938年製。
隅々まで作りが精工。この頃のライカのレンズはレンズ構成も単純でガラスの枚数も張り合わせ面も少なく(Elmar 50/3.5は張り合わせ面は1枚)頑丈で壊れにくい。はい、軍隊の偵察用ですから。
軍用だからよく写るということ。叡智と技術の結晶。クリアーな光学。
光学内部の塵にピントを合わせた。黒い塵1つ混入、以上。非常にクリアー。80年以上前のレンズ。
α7Cに装着するとこんな感じ。いいよね、コンパクトでカメラの黒とマッチして似合う。
沈胴エルマーちゃんをもっと使ってあげないと。
Elmar 50mm f3.5 L エルマー50mmの作例Review
最短撮影距離は1mだがヘリコイド付きマクロアダプターを装着すれば半分程度の距離まで寄れる。作例前半の撮影機材はSonyのフルサイズミラーレスカメラα7Cでいつも通りレンズの素性を探る為にクリエイティブスタイルはNTでjpeg撮って出し。後半の作例も撮影機材はA7Cだがjpeg撮って出しとライトルームで加工したものをMIXして比較した作例も掲載した。
夕焼け。あなどるなよElmarを。90年前のレンズ。「ライカはエルマーに始まりエルマーで終わる」とはよく言ったものだ。いぶし銀な写りが心に染み入る。
また持ち出そう。
新宿の鳩さん。ガラス越しの撮影なので画面全体をフレアーか薄いベールが覆っているように見える。
こちらはフレアー。
新宿は若松河田駅。昭和レトロな写り。
街並みがエモい。
エモいでしかない。時が止まっているようだ。製造本数が多いエルマー50/3.5は5万円前後で購入できるライカの銘玉だ。
真冬の三日月。
続いて別日に撮影した作例を掲載する。マクロ側で高解像度がわかる写真や玉ボケ、虹ゴーストなど戦前のエルマーと思えない程の作例がてんこ盛り。撮影機材は同じくα7C。
神社へ初詣がてら試写。中央部のピント面のシャープネスと解像度、ボケ感。ヘリコイド付きマクロアダプターを装着して50cm程度まで寄れる。
モノクロでもこの存在感。
優しさと雰囲気とシャープネスを兼ね備えている。
要するに戦争の偵察用として使用していた軍需品だからよく写るのだ。
本当にすごいからエルマー50mm/f3.5は。
背筋が凍るような写りをすることがある。
そして美しい虹ゴーストも出現。
柔らかいフレアーもいい雰囲気を醸し出す。
皆の願いが叶います様に。
理屈抜きで泣ける写真が撮れるオールドレンズだ。
5万円以下で入手可能な戦前ライカのオールドレンズ。
歴史的建造物もハマる。
エルマーは神社仏閣もハマるのだ。
日本にハマる。
モノクロもハマる。
ツヤと透明感がエグい。基本オールドレンズは開放の収差や甘い描写を堪能するに尽きるが、絞った。モノクロ。神社、全てハマった。
ツバキの緑の葉にピントを合わせる。戦前でこの解像度には恐れ入る。フレアーでコントラスト低下、虹ゴースト発生。
玉ボケの形は美しくはないが収差の1つとして楽しめる。STかVV2。
スナップも草花もいける。
嫌味がなくていい世界観。
f3.5というf値でなめられがちなエルマー、実は相当いいぞ。
エルマーを見くびっていた訳ではないが、さすが伝説の銘玉。たった4枚で描く世界は秀逸。また持ち出したい。
木枯らし。
確かFL。
バイバイ。
まとめ
LeicaのElmarとZeissのTessarは絞り羽根の位置が違うだけでレンズ構成はほぼ同一。テッサーは現在でもZeissで採用されているレンズ構成の歴史的銘玉。
正直なところ筆者自身、戦前Elmar 5cm f3.5は地味な写りで遊べるオールドレンズという認識はほとんどなかった。歴史的銘玉だから1本は持っておこう位にしか思っていなかった。しかし、ふとまともな作例がないことに気付き、いつも通りのスタイルで撮影したらその写りに驚いた。
数万円で買える戦前ライカとして自信を持っておすすめできるライカの銘玉だ。作例年明け早々からライカエルマーのレンズティスティングおいしゅうございました。ごちそうさまでした。
後に旧エルマーを知り購入してレビューした。旧エルマー50mmf3.5の見分け方とレビュー作例はこちら
今回は以上。本日も素敵なオールドレンズライフをお過ごしください。