Anastigmat(アナスチグマット)とは ザイデルの5収差全てを解消したレンズ
Anastigmat(アナスチグマート、アナスティグマート)とは、レンズの収差補正を示す用語で、ザイデルの5収差である色収差、球面収差、コマ収差、像面湾曲、非点収差の全てを解消しているレンズの状態を指す。
アナスチグマート、アナスチグマートはドイツ語読みで英語読みはアナスチグマット、アナスティグマット。現代の写真レンズのほとんどはAnastigmatに該当する。また、球面収差とコマ収差を解消しているレンズの状態をAplanat(アプラナート)といい、球面収差とコマ収差と非点収差を解消しているレンズの状態をStigmat(スチグマート)という。
光学用途に用いるレンズは、光がレンズを通る時に屈折する過程で発生する色収差、球面収差、コマ収差や像面湾曲、非点収差といったザイデル収差の全てが補正されていることが一般的には望ましいとされている。
しかし、レンズが普及し始めた初期の頃の単純な構成のレンズは、全ての収差を効果的に補正することは困難であり、Aplanat(アプラナート)やStigmat(スチグマート)と呼ばれるレンズ構成のレンズは収差の補正が限定的だった。
全ての収差を補正するAnastigmatとして最初に実現したのは、イギリスのRoss(ロス)のシュレーダー博士が1888年に開発したConcentric(コンセントリック)で、次いで同じ年の1888年にCarl Zeiss(カール・ツァイス)のPaul Rdolph(パウル・ルドルフ)博士が開発したZeiss Anastigmat(後Protar(プロター)に改名)、次にGorz(ゲルツ)のEmil von Hoegh(エミール・フォン・フーフ)が開発したDoppel-Anastigmat Gorz(ゲルツ・ドッペルアナスチグマート)(後のDagol(ダゴール)(後のHeliar))や、 Voigtlander(フォクトレンダー)のケンファー博士が1893年に開発したCollinear(1920年以降はKollinear(コリニア)表記)などが初期のAnastigmatレンズだ。
1893年、Harold Dennis Taylor(H.D.テイラー)が、単純な3群3枚構成で全ての収差を補正できるTripret(トリプレット)が考案され、アナスチグマートが一般化した。20世紀前半までは、カメラ用レンズ銘にアナスチグマートであることを明記した製品も多かったが、アナスチグマートであることが当たり前になってからは、製品の特長として言及することは少なくなった。
1880年以来、Anastigmatの製造にはバリウムクラウンガラスが使用されてきたが、近年ではほとんどの場合ランタンガラスか、プラスチックや塩化ナトリウムの単結晶などの透明な材料が使用されている為、屈折率は高いが分散力は低い。
アナスチグマートが発明された当時は対称型のレンズ構成が普及していて、対象型レンズの片側だけでもレンズとして使用できた為、この片側のレンズをアナスチグマートと呼んでいた。
その後、片側レンズを対象にして2つ組み合わせたレンズが市場に出回るようになり、Doppel-Anastigmat(ドッペルアナスチグマート)または、Double-Anastigmat(ダブルアナスチグマート)と呼ぶようになった。
参考文献:Wikipedia , 出展元不明Anastigmat , Wikiwand , https://www.enciklopedija.hr/natuknica.aspx?ID=2507