ザイデルの5収差とは何か初心者にもわかりやすく簡単に解説
ザイデルの5収差(単色収差)とは何か初心者にもわかりやすく簡単に解説する。古来は収差は忌み嫌われ収差が残存するレンズの評価は低かったが、近年ミラーレスカメラの普及により、収差は個性や芸術の表現方法の1つとして認識され、収差が残るレンズの評価や価値が高まっている。今回は、ザイデルの5収差と言われる球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差について初心者にもわかりやすくできるだけ簡単に解説する。
ザイデルの5収差(単色収差)とは?
ザイデルの5収差(ザイデル収差,Anastigmat)とは、幾何光学においてレンズや鏡で像を作る時に生じるボケや歪みなどの収差のうち、レンズにおいて色収差を覗く、単一の波長の光でも生じる収差(単色収差)を意味する。「ザイデル」は、19世紀のドイツの数学者、光学者、天文学者の「ルートヴィヒ・ザイデル」が由来。
球面収差
コマ収差とは、画面の全体で輪郭がボヤける症状。本来はレンズに入ってきた光は全てセンサーに結像するのが理想。しかし、レンズは球面なので中央部と端部では光の入射角度が違う。その為、センサーに入ってきた光は同一に収束されず、その結果ぼやけた写りになる。この球面収差を抑える為に非球面レンズが使用される。手動では絞る事で球面収差を抑える事が可能。絞るとシャープになるという原理は、この球面収差が抑えられる事により絞り開放でぼやけていた症状が抑えられるから。また、この球面収差は後処理で補正できない。
コマ収差
コマ収差とは、星などの光源を撮影した時に光源が尾を引いて尖って写る現象を指す。「コマ」は英語で「彗星(Comet)」が由来。画面の周辺部は収差が発生しやすい為、点像が1つでも収差が複雑に絡む事がある。「コマ収差」とはまさに「彗星(コメット)」が尾をひいたような形の事を意味する。星空撮影でよく聞く「サジタルコマフレア」は、コマ収差やその他の収差が複雑に混じり合った収差現象の事を意味する。
サジタルコマフレアとは
サジタルコマフレアとは、点光源の像が翼を広げた鳥の様な形に滲む現象を指す。また、サジタルコマフレアの単語を分解して直訳すると、
- サジタル=画像同心円方向
- コマ=コマ収差
- フレア=迷光時のコントラスト低下
であり、同心円方向とは、放射線状ではなく円形状のことを意味する。
画像転用元:虹色の旋律
コマ収差が起こる原因は、レンズに斜めから入ってきた光は、光が当たるレンズの場所によって屈折率が変わる為、センサーに結像する焦点と位置がズレる。コマ収差は後処理で抑える事はできないが、絞ったり非球面レンズの使用で抑える事が可能。
非点収差
非点収差とは簡単に言うと、画面周辺部で点が点に写らない(非点)症状を指す。点光源の形がいびつになり横や縦に伸びる事がある。いわゆるグルグルボケがこれに当たる。もっと専門的に言うと、1点を光源とする光がレンズに対して同心円方向と直径方向において焦点距離がずれる現象が非点収差。像面湾曲による像面が同心円方向の像と直径方向の像で異なった面になると非点収差になる。非点収差は、非点収差補正装置の使用によって抑える事ができる。非点収差補正装置とは、非点収差を持った楕円状の電子線)を円形状にする装置のこと。
詳しくは日本電子株式会社の記事で非常に詳しく解説されているが、あまりに専門的な為、解読不能。
像面湾曲
像面湾曲とは、中央にピントを合わせた時に周辺部がぼやけたり、逆に、周辺部にピントを合わせると中央がぼやける収差のこと。像面湾曲は後処理で改善はできなく、絞っても抑える事はできない。
歪曲収差(ディストーション)
歪曲収差(ディストーション)とは、文字通り像面が歪む収差を意味する。歪曲収差は2種類あり、中央に向かって萎む「糸巻き収差」と、周囲に向かって樽の様に膨らむ「樽型収差」がある。糸巻型は望遠レンズに見られやすく、樽型は広角レンズに出やすい。魚眼レンズはこの歪曲収差を敢えて残している。
まとめ
ザイデルの5収差の中でも近年人気の収差である滲みは筆者が一番好きなオールドレンズの収差だ。収差を毛嫌いせず様々なオールドレンズの個性ある収差を楽しもう。レンズの設計開発は常に「何を捨てて何を残すか」との闘いだった。かつてのレンズ設計者や博士たちが日夜頭を悩ませ苦悩の果てに完成させたレンズはどんな表現をするのか、心ゆくまで楽みレンズの開発設計者たちをリスペクトしよう。筆者は古いレンズには開発者とかつてのレンズオーナーたちの執念と魂が宿っていると考えている。以上で「ザイデルの5収差(単色収差)」についての解説を終わる。本日も素敵なオールドレンズライフをお過ごしください。