Tessarとは Carl Zeissのレンズ設計士パウル・ルドルフが設計した3群4枚のレンズ構成名 トリプレット発展型
Tessarとは
Tessarとは1902年にCarl Zeiss(カール・ツァイス)のレンズ設計士Paul Rudolph(パウル・ルドルフ)が開発した3群4枚構成のレンズ構成名のこと。発売当初から大人気で高性能な割に製造しやすいレンズだった為世界各地でライセンス生産された。
最初に開発されたTessarと名前の由来
最初のテッサー型レンズはパウル・ルドルフがエルンスト・ヴァンデルスレプの協力を得て開発したTessar 12cm F6.3 Ⅱb。このⅡbシリーズは通称bテッサーと呼ばれる。Tessarという名称はレンズ構成3群4枚のガラスの枚数「4枚」をギリシャ語で(τέσσαρες: Tessares)ということが由来。3群3枚のトリプレットが「3枚」英語で3の「Triple」が由来しているのと似ている。
Tessarの開発者ルドルフ博士はTessarの大口径化に反対だった
当時ルドルフはF値の向上に否定的だったが、ヴァンデルスレプによりF4.5、ウィリー・ウォルター・メルテによりF3.5、さらにF2.8まで大口径化された。ツァイスの分類では、F6.3のテッサーはシリーズIIB(通称bテッサー)、製版用のアポテッサーはシリーズVIII、F4.5やF3.5の大口径テッサーはシリーズICとされた。ちなみに、ルドルフ自身が手掛けた唯一のテッサーはTessar16.5cm f6.3。
Tessarのレンズ構成
Tessarを開発したCarl Zeissによるとテッサーはルドルフ自身が開発したUnar(ウナー)の前群とこちらもルドルフが開発したProtar(プロター)の後群を合わせた3群4枚構成とのことだが、凸凹凸3群3枚Triplet(トリプレット)の後玉を凹凸2枚の貼り合わせに発展させたレンズとも見ることができるし、アナスチグマットの発展型という意見もある。
特許上Tessarは2群と3群の間に絞りがある。これに対し、1群と2群の間に絞りがあるものをElnst Leitz エルンスト・ライツ、現Leica(ライカ)社のElmar(エルマー)にちなみエルマー型と区別することもあるが、Elmar銘でも2群と3群の間に絞りがある個体もある。
Tessarが驚異的人気を博した理由
収差補正済みレンズとしてTessarが登場すると、トリプレットに代わりすぐに人気となり世界中で使用されるようになった。人気となった理由は、高性能な割に製造しやすいレンズだった為、世界各地でライセンス生産されたということが大きな要因だ。1926年頃Tessarの特許が切れるとさらに多くの国やメーカーで製造されるようになった。
それまで普及していたトリプレットと比較してテッサーは歪曲が少ない、美しいボケ、ピント面のシャープさ、画面の隅までしっかり描写するなど、当時としては驚異的な高画質を実現していた。
また、シンプルなレンズ構成により当時の生産技術と相性がよく大量生産を可能にしたことにより当時の標準レンズの代表格へと成長した。1930年代以降は、Sonnar(ゾナー)やDoble Gause(ダブルガウス)の大口径化が台頭し、フラッグシップとしての地位は崩れた。しかし、汎用レンズとして普及がさらに進み生産数は増えた。
世界では「鷲の目テッサー」日本では「鷹の目テッサー」
Carl Zeissは「あなたのカメラの鷲の目」(Das Adlerauge Ihrer Kamera)というキャッチコピーでテッサーを宣伝し、世界中の写真家からもそう呼ばれるようになった。
なぜか日本では「鷹の目テッサー」と呼ばれるようになった。確かミノルタのRokkorがZeissの鷲の眼に対して「鷹の眼ロッコール」と謳い文句を付けたのが始まりだったと記憶している。鷲はEagleで鷹はHawkなので正しくは鷲の眼テッサー。そして鷹の眼ロッコール。
Tessarは広告写真撮影業界で支持された
Kodak(コダック)のコマーシャルエクターのようにテッサーは広告写真撮影の業界で広く支持された。これは、テッサーの高いコントラストと発色の良さでテッサーで撮影した写真が人々の目を引きやすい為、広告の撮影レンズとして人気があったと推測する。
Tessarは3群4枚というシンプルな構成でコンパクトカメラブームやパンケーキレンズブームでも大人気
1960年代のコンパクトカメラブーム、1970年代のパンケーキ型レンズブームでもシンプルな4枚構成のテッサー型レンズは市場を座巻した。1990年代までテッサーは第一線で活躍していたが2000年に入るとカメラのデジタル化の影響でテッサーの優位性に陰りが見え始める。
100年以上第一線で活躍したTessarが市場から消えていった理由
実はテッサーは解像力が高いレンズではない。コントラストが高い為シャープに見えるが、拡大表示して確認すると解像度はそれ程高くないとわかる。フィルム時代はフィルムの粒状性イコール写真の解像力だった為、大判や中判を使用しない限りレンズの解像力を緻密に比較することは困難だった。
しかし、デジタルカメラの解像度がフィルムの能力を上回ったことにより、誰でもモニターでレンズの解像力を確認できるようになった。これによりレンズの解像力がレンズの性能指標の1つとなった。
さらに、近年生産技術の向上によりテッサー型ではなくても安価に大量生産できるレンズが誕生してきた為、テッサーでなければならない理由がなくなってしまった。こうして100年以上の歴史を誇るテッサーは次第にアドバンテージを失っていった。
参考文献:オールドレンズ解体新書 , Wikipedia