Leica Summaron 35mm F3.5L 前期 Review作例 ライカ戦後初オールドレンズ サンハンズマロン
Leica Summaron 35mm F3.5L 前期 Review作例 ライカ戦後初オールドレンズ サンハンズマロンの愛称で親しまれる本レンズはライカの中では入手しやすい価格帯で鏡胴は小さく重量も軽くスナップに最適なおすすめ準広角オールドレンズだ。また、かなり古いオールドレンズは同じ銘板のレンズでも個体差が大きく、個体によって写りが違うので自分だけのオンリーワンのお気に入りのレンズを探すのも楽しみの一つだ。
ライカ Summaron 35mm f3.5 L レンズ外観
撮影機材カメラはSony α7Ⅳ、レンズはMeyer Optik Gorlitz Oreston 50mm f1.8。
とりあえずわかりやすく絞ってF8で。絞るなら現行レンズの方がいいのだが現行レンズはSony 20mm f1.8Gとタムロン 28-200mm f2.8-5.6 (HA036)以外売却したので。というか物撮りでレンズを触って動かして循環していかないと。御覧の通り超コンパクト。α7cはAPS-Cのα6600と同じくらい小さいフルサイズ。昔の沈胴ライカのオールドレンズとか国産ノンライツとか、まぁよく似合う。
撮影機材のメイヤーは高級路線で品質の高いレンズを供給していたが、Carl Zeiss傘下のPentaconに吸収合併された後、1960年代後半からレンズの品質が劣化した。オレストンは品質が劣化する直前または劣化のし始め時期に生産されたレンズだが、当時の評価は可もなく不可もなく。オレストンは大量生産されたモデルで、同社のDomironの方が力を入れて作られていた。
なんせ寄れる。ヘリコイドアダプター装着してるが元々最短撮影距離は30cm台。前期と後期で最短撮影距離は多少違う。
開放時の物撮りは花を撮ってる気分。レンズは企業による工業製品なのだなぁとヒシヒシ。ライカのレンズは戦争の軍需用品として国家に収めていたし。戦後もアメリカに。
レンズの縁にピントを合わせた。その作りの精工なこと。工芸品に近い。
こうやって見るとかっこいい。小さい割にずっしりと真鍮製鏡胴の重みとガラスの塊の重みを感じる。
ちょっとアングル変えて見上げてみた。これからも宜しく、準広角の相棒。被写体がサンハンズマロンで撮ってる機材はオレストン。
で、後日真面目にレンズを物撮り。Sony α7CⅡ、FE24-50mm f2.8Gで撮影。GmbHは日本でいうところの有限会社。ライカ初の首絞り採用。操作性で問題は無限遠ロックにした状態で絞り羽根を操作しないとヘリコイドごと動いてしまうので無限遠にするのが面倒ならレンズを抑えながら絞り羽根を操作する必要がある。
絞り羽根を操作すればわかるが高級時計のような操作感と音。たまらない。ライカの中で一番作りが精工だと思う。手元にある8枚玉よりも。
当然、作りも写りも個体差が激しい。本レンズはメッチャ美しい虹ゴーストが発生する。
重量も個体差がある。
光学は多少の経年劣化はあるがオーバーホールが入った個体は避けたいので当時から手つかずであろう、これこそが至高の極み。皆ちょっと勘違いしてる人多い。アンティークコインも洗浄されたものは価値が下がる。
本レンズはVer1であり、Ver2は直接触ったことがないからわからないが。
サンハンズマロンとは
サンハンズマロンは戦後ライカが最初に手掛けたレンズでElmar35mm f3.5の代わりに誕生した。35mm f3.5という口径比に対して4群6枚ダブルガウス型という非常に贅沢なレンズ構成。1946年に初めて600本製造され、1947年と1948年は製造されず1949年に1508本製造されて本格的な生産が始まった。これは恐らく戦後のドタバタが影響していると思われる。
1946~1956年が前期で1956~1960年が後期でLTMは合計約8万本製造された。ライカ最盛期時代のレンズなので鏡胴は真鍮製でレンズの作りは精工で贅沢な仕上がりになっている。f値が暗いレンズがチープな廉価版ではなかった頃の貴重なレンズだ。
ライカMマウントの個体は1954~1960年に製造され、ビューファインダーなしが20,064本、ビューファインダー付きは19,141本製造された。LとM合わせて約12万本製造された。これはもちろんライカ35mmの中で一番売れている。
現代レンズにはない柔らかさと地味だがしっかりとした描写、逆光に弱くゴーストも楽しめる。筆者が保有する本レンズは複数本撮り比べをして円環の虹ゴーストが美しく時に何重にも重なる個体を選んだ。敢えてカビ跡ありを選んだが、カビは時に結構いい仕事をするのだ。ライカの中では安価に入手可能なレンズ。
サンハンズマロンを購入した中古カメラ屋はマップカメラ
マップカメラにて購入。周辺減光あり、描写の特徴は地味だが堅実で当時にしては歪曲収差は少なく円環の虹ゴーストが美しい。シリアルナンバーは1227429で1954年製。筆者は古いレンズの方が好きなので戦前モデルを狙っていたが、複数個体があり4つのレンズで撮り比べをしたらカビ跡ありで4本の中では一番新しく最初に選考から外れると思われたレンズがきれいな円環ゴーストが複数発生したので購入。やはり適度にレンズに問題がある方がいい写りする場合がある。カビ、くもり、キズなど。あえてカビを培養したりレンズにワセリンを塗って使用する強者もいる。
カビ跡を無視してむしろ敢えてカビレンズを選ぶ選択肢もある
筆者はスーパータクマー55mmF1.8の前期2本と後期1本を保有していて撮り比べをしたことがあるが、カビありの個体で撮影した写真が、全体がほんのり白くぼやけてノスタルジックな写りになってゴーストも美しく「チクショウ…」と呟いた。皆さんも同じ個体でクリアなレンズと多少問題があるレンズを撮り比べたら面白い結果が出るかもしれないので是非試して欲しい。カビは他のうつることがあるので別で保管するといい。または部屋をよく換気して湿度が60%を超えないように除湿器などで部屋の湿度管理をするとカビが増殖しにくくなるのでおすすめだ。
実は簡易的な防湿庫(ドライボックス)は湿度が40%になるまでに1週間かかる。なので頻繁に撮影したりレンズを見たり触ったりするタイプの人は防湿庫に入れない方が良い。筆者も防湿庫に入れずに風通しのいい場所にレンズを置いてレンズの周辺に適当に除湿剤やカビ防止剤を置いている。部屋は換気をこまめにして湿度管理も行っている。機械式ですぐに湿度が下がる防湿庫を使用するならそれが一番いいかもしれないが、高価で重くて音がするし場所を取るし電気代もかかるので今のところ必要ないと思っている。
Summaron 35mm F3.5 Lのスペック
- 製造年:1946~1960年
- シリアル:601,001~1,750,000
- 製造本数:80,019(うち約62000本はヘリコイド回転式のVer1(1946~1956年)で、約18,000本はヘリコイドが直進式のVer2(1956~1960年))
- レンズ構成:4群6枚ダブルガウス型(オルソメター型)
- 最小絞り:f22
- 最短撮影距離:1m
- フィルター径:Ver1はA36でVer2はA39
- フード:Ver1がFOOKHでVer2はITDOO
- 重量:145g(実測値)
1954年イタリア版Leitz社の総合カタログに「屋内撮影や建築、風景、報道写真などに適した広角レンズ。口径食を防止する大きいフロントエレメントのおかげで特にカラーフィルムに最適。」と記載されている。カラーの発色がよくて驚いたのは間違いではなかった。コントラストの付き方がよくモノクロもかっこいい。ライカの35mmは激戦区だが安価で写りも定評があるサンハンズマロンは当時も現在も人気が高い。
Summaron 35mm F3.5 Lの作例と描写の特徴のレビュー
新宿西口都会ド真ん中の地下へ通じる出入口。午前10時45分頃、蕎麦を食べてから中古カメラ屋に向かおうという道中。通りすがりにふと階段を見ると誰もいない。不思議な感覚を覚えてシャッターを切る。
割とお世話になってるレモン社新宿のテナントが入っているビル。見上げたら曇り空と街頭がいい雰囲気だったのでシャッターを切る。中間調が豊富でトーンで勝負できる準広角のオールドレンズは貴重だ。
小学校の校舎と桜と虹ゴースト。サンハンズマロンも個体によりこの様に何重にも連なる美しい円環ゴーストが発生する。この場合のポイントはカビ跡。くもりやレンズのキズも滲みやゴースト、シルクのカーテンがかかった様なノスタルジックな描写になることがあるので、ただダメージがないオールドレンズを選ぶのではなく、その写りが気に入ったかどうかで判断するといい。
遠くに見える山。日本の山は本当に美しい。心からそう思う。それだけで幸せ。
ヘリコイド付きアダプターを装着してマクロ端で撮影するとこんな感じ。元々の最短撮影距離は1mなので50cm位まで寄れる。マクロ級の機動力はないがスナップでは充分楽しめる。35mm、F3.5というスペックの為ボケはやや硬め。不自然な立体感はなぜ?
クリエイティブルックはFL。絵画ではなく写真。ボディ内設定でほぼjpeg撮って出し。にしてはエモすぎる。青梅駅前の「まちの駅」という名のお土産屋さん。厳密にはまちの駅ではない個人が営む商店だ。不思議な画が撮れた。
青梅の住吉神社の階段。先人たちもこの階段を登ってきたのだろうと思うと感慨深い。
青梅の住吉神社本殿。この風格。
青梅は古い建造物が残るレトロな街並み。サンハンズマロンとモノクロが冴え渡るスポットだ。
昭和のレトロなオートバイ。美しすぎて寒気する。
この柔らかい描写。ハイスペックの高速レンズで大きなボケだけがレンズの良さじゃないって教えてくれる。自分がその時に感じた感性をなるべくそのまま出してくれるレンズが撮り手にとっていいレンズだと思う。
さらにモノクロで際立つ。
さすがに花は苦手か。
玉ボケの周辺がレモンになりグルグルの兆候が見られる。今度このレンズで玉ボケとグルグルがどこまで出せるか挑戦してみよう。
この柔らかい描写と周辺が自然にほんのりざわっとボケる感じが絶妙。青梅ってすごい。街自体が絵画的。街自体遺産だなこれ。新しい建物をこれ以上増やさないでほしい。
青梅唯一の映画館シネマネコ。
アーティストのお庭。もうね、芸術が爆発し過ぎてる。伝えたいことがなんとなくわかる。ちょっと口に出しては言えないことなどもこうやって表現するんだな。アートって素敵。
祭りの踊りの練習をマジモードで行う近所のオババたちを少し離れて黙って見守る子供たち。
パン屋さん。ね、街全体がかわいいのよ。そして戦後直後のこのレンズがいい感じに撮ってくれる。「グート」ってどういう意味だろう?お腹が「グ~」っと鳴る的な意味かな?そ、それだ!
やっぱ好きだなこのレンズ。後に購入したElmar 35mm F3.5と撮り比べしたい。
新緑木々とゴースト。
青もみじ。
小学校と桜の花が散った後。桜の木の緑も好き。
ほら美しい。
街全体がモニュメント。
みかんと梅の木。後ボケやっぱりグルグルしかけてる。
チューリップをモノクロで。エグい。
カラーの発色もいい時がある。
木々と青空と雲。それだけで美しい。
藤の花。生きていて幸せだ。ただ何気ない日常が一番の幸せで一番の贅沢かもしれない。父さん母さんに感謝しよう。
きれいだなぁ。そう思える君の心がきれいだよ。
素敵なガーデニング、職人。素敵な感性だなぁ。レンズの写りがどうとか、自分は小さい人間かもしれない。とかふと思ったり。
でもそのおかげでこうやって素敵なエモい写真が撮れるカメラとレンズにも感謝。
バイバイ。
Summaron 35mm f3.5 LTM 写りの特徴
- ライカ史上初めて隅々までよく写る広角レンズ
- 開放はやや甘めだが2段絞るとかなりシャープネス
- 開放は低コントラストで諧調豊富
- 絞ると高コントラストでZeissのような硬派な写り
- 逆光に弱く美しい虹ゴーストが発生(個体差あり)
- 質感が非常にいい
- 硬いものは硬く柔らかいものは柔らかく基本的な表現力に優れている
- 開放はHBの鉛筆でデッサンしてるような線の細さ
- 絞ると木炭でデッサンしてるような線の太さだが優しさは健在
- 描き方が血が通っているようで丁寧
- 開放は優しく柔らかく温かみのある繊細な描写
- 写りは個体差が激しいので試写必須
- 後期型とはまた全然違うと思われる
まとめ
サンハンズマロンよき。ほのかな滲みと柔らかい雰囲気の淡い描写。歪曲は若干ありだが今から70年前のレンズにしては優秀。サンハンズマロンは35mmという広角でもあるし大きいボケがどうとかより、その場の雰囲気や情緒や風情などの感性を切り取れるレンズだ。写りはデッサンや水彩画に近い感じ。小さくて軽くてエモいノスタルジックな描写をすると感じた。
今回の作例を見ていいなと思ったらズマロンを検討する参考にしてみるといい。前期型と言えど年代によって個体差は大きいが戦後直後はほとんど製造されておらず、本格的な生産は1949年から始まった為、それ程気にする必要はないが、戦後のドタバタを潜り抜けた1950年~1956年の個体がおすすめ。
今回は以上。本日も素敵なオールドレンズライフをお過ごしください。