宮崎光学 VARIOPRASMA 50mm F1.5 Review作例 MS-OPTICSのバリオプラズマは超クセ玉
宮崎光学 VARIOPRASMA 50mm F1.5 Review作例 MS-OPTICSのバリオプラズマは超クセ玉。伝説の銘玉、戦前Hugo MeyerのKino Prasmatをオマージュして現代に復刻させたレンズだ。写りの特徴は滲みや虹ゴースト、フレアー、バブルボケやグルグルボケも盛大に発生する。筆者は宮崎光学のホームページから購入した。
VARIOPRASMA 50mm f1.5とは
宮崎光学(MS-OPTICS)のVARIOPRASMA(バリオプラズマ)は、戦前Hugo Meyer社(後のMeyer Optik Gorlitz)の伝説的銘玉Kino-Prasmatの設計思想を受け継ぎインスパイア(復刻)したレンズだ。では、ヒューゴメイヤーのキノプラズマートとは何か簡単に解説する。
キノプラズマートは、Hugo Meyer(ヒューゴ・メイヤー)社の1922年に Paul Rudolph(パウル・ルドルフ) が設計した伝説的シネマレンズで生産数が少ない。2022年現在での中古相場は100万円を下らず、高額だと300~400万円で取引されているようだ。
パウルルドルフは元Carl Zeissの光学部長で1911年にツァイスを退社し隠居生活を送っていた。しかし、第一次世界大戦で自国ドイツが敗戦し、多額な損害賠償請求と社会経済混乱によるハイパーインフレーションの影響で紙幣価値は何兆分の1になり、ゴミくず同然になってしまった。
資産を失った61歳のルドルフは復職を余儀なくされた。当初は以前在籍していたCarl Zeissで勤務するが、より自由に仕事ができそうなベンチャー(新興)企業であるHugo Meyerに転職してレンズの設計を担当した。
そしてDagol(ダゴール)型を分離した光学のレンズを設計し、「Prasmat(プラズマート)」と命名した。このプラズマートをシネマ(映画)用に設計し直したものが「Kino-Prasmat」だ。キノプラズマートはイメージサークルが小さく画角も狭いシネマ用に特化することで、開放でF2やF1.5という明るさを実現した。
レンズ構成はプラズマート型としているが、実際はメニスカスレンズを絞りに向かい内向き対照型に配置している。描写はスチルとしても優秀で、後にライカL39マウントでも発売された。もちろんキノプラズマートはライカ純正レンズではないが、当時のライカ交換用レンズで最も明るいレンズだった。
イメージサークルが小さいシネマ用レンズのキノプラズマートをライカ用に対応させることで無理が生じ、背景に強烈なグルグルボケや諸収差が発生した。近接(マクロ側)でより強いグルグルボケが生じ、無限遠(テレ)側では放射状傾向が強いボケになる。それに対し、画面中心部のみ突出して解像力が高い為、周辺の収差とのギャップにより立体感が生まれ、妖艶で個性的で非常に独創的な絵画の様な描写となる。
この不思議な収差に魅せられた熱狂的信者のカメラマンや大衆から支持を集め、価格が非常に高騰している。キノプラズマートレンズの焦点距離は広角から中望遠までラインアップされている。
VARIOPRASMA 50mm f1.5のスペック
- メーカー:MS-OPTICS(宮崎光学)
- レンズ名:VARIO PRASMA
- 焦点距離 50mm
- 絞り値:最大F1.5~最小F15
- レンズ構成:4群6枚キノプラズマート型
- コーティング:フルマルチコート
- マウント:ライカM
- フィルター径:39mm
- 最短撮影距離:0.7m
- レンズ構成:Kino Plasmat(キノプラズマート)型
- 特徴:球面収差が手動で変更可能
- 発売年月:2019年8月
SA可変は0Pointのみフォーカス連動。-1~+1は非連動ミラーレス一眼でピント合わせ可能。-1では∞~3mフォーカス不可。
VARIOPRASMA 50mm f1.5のレンズの素材やレンズ鏡胴の素材
バリオプラズマに限らず宮崎光学のレンズは総じて小型軽量だ。あまりにも小さくて軽い為、耐久性や性能など不安に思う方もいるかもしれない。その点について簡単に解説する。
レンズの素材
レンズ光学の素材は、OHARA製の光学ガラスを採用。CanonやKonica、Sonyなどの業界最大手メーカーもOHARAのガラスを採用している。
レンズ鏡胴の素材
レンズ鏡胴素材は、宮崎光学の社長に直に確認してみないとわからない。
フード等のレンズ金物の素材
フード等のレンズ金物の素材は、アルミ合金にアルマイト加工を施し強度を増している。
キノプラズマートの設計思想を改良しバリオプラズマが誕生した経緯
以下宮崎光学公式ホームページから一部引用。
KINO-PRASMAT 50mm f1.5は1922年に Paul Rudolph(パウル・ルドルフ)開発したが、キノプラズマート50mmはシネ用として作られた為生産数そのものが少ない。 キノプラズマート独特のソフト描写がマニアの間で人気で相当な高額で売買されていて入手は困難。 宮崎社長はおよそ20年間で約30個のキノプラズマートレンズをLeica Mマウントに改造した経緯を持つ。
Kino-Prasmat(キノプラズマート)の非球面収差は左へ大きく膨らみf1.5で0に戻る。非点収差はSとMを左右に分けて平坦像を実現した。この為、後で円周状に、前で放射方向に像が大きく流れ、独特なソフトな描写は現在のレンズでは得られない。
このキノプラズマートの独特な癖を残しつつ、より使いやすいレンズに改善した。当時のバリュームガラスの代わりにランタン系高屈折ガラスを採用し球面収差と非球面収差を改良した。球面収差はレンズに付いたレバーを動かして可変できる。
非点収差のS・Mの隔差は像面を少し湾曲させて像が円形になるように改良し、品格のある癖玉レベルに仕上がっている。 レンズの前リングを-1、0、+1へ回しソフトレベルを変更できる。
-1はKINOPRAの球面収差の膨らみが得られ、0は非点でコマ双方が最も良好で軟調さを残しつつ前面で良像となる。+1ではSAの膨らみは大幅に軽減し、f2.4付近でフレアーがなくなり中心から中間部までシャープになる。
VARIOPRASMA 50mm F1.5のレンズ外観レビュー
撮影機材はα7Ⅳ。
レンズは小さくて軽い。耐久性とか本当に大丈夫かなと不安になりそうなくらいだが、ご安心を。しかし写りはあなどるなかれ。
ライカMマウントなので焦点工房のヘリコイド付きマクロアダプターを直で装着してボディに装着している。
では、宮崎光学バリオプラズマの作例を紹介していく。
VARIOPRASMA 50mm f1.5の作例
撮影機材のカメラはSonyα7Ⅳでレンズの素性を探る為、基本jpeg撮って出し。ただし敢えてシャドウの奥を狙った写真は現像でハイライトとシャドウを多少調整してディテールを表現している場合もある。jpeg撮って出し画像 滲み,バブルボケ,グルグルボケ,虹ゴーストなどオールドレンズらしい収差が満載でエモい。
キノプラズマートをインスパイアしたバリオプラズマは、ソフトレンズやペッツバール型レンズなども思わせる描写である。エモい。
周辺は簡単にざわつき玉ボケも発生しやすい。
逆光には弱く純正フードも用意されているが、今回はフードなしで撮影している。円環の虹ゴーストも出現。
なんでもエモい写真が撮れてしまうので面白くないかもしれない。滲みが派手で写真が泣いているようだ。
周辺減光も若干あり。
ボディ内の設定でクリエイティブルックを変更しているので今回は参考になりづらいかもしれない。これは見るからにSH。
薔薇の花びらの輪郭がシャープ。多分1、2段絞っていると思う。
薔薇の蕾。
バブルボケ(シャボン玉ボケ)出現。キラキラした光源がある環境下ならもっときれいなバブルボケが出ると感じた。
エモいでしかない。オールドレンズではないが。
幻想的。
収差の強弱は手動で調節可能。作例を撮影したのが半年以上前なので記憶が定かではない為、近々また試写してレビューする。
クセがかなり強いので好みがわかれるかもしれない。
トンボさんだ。オニヤンマかな?かっこいい。
できるだけ開放で撮影した記憶があるが、昆虫という被写体でこのレンズでこの距離だとf5.6位じゃないとくっきり撮れないのは百も承知。
輪郭がはっきりとしたバブルボケも発生。
周辺像の流れ方がエグい。
グルグルボケ発生。
ハイライトは盛大に滲む。
まとめ
作例を見ての通り残存収差が強い銘玉オールドレンズ「キノプラズマート」をインスパイアして設計したレンズなのでクセが非常に強い。虹ゴーストは美しく中央部の解像力やシャープネスは目を見張るものがある。
ただ、収差を強めに設定するとじゃじゃ馬過ぎて使いこなすのが難しいかもしれない。これ1本で長く楽しめるレンズだと思った。また、次回試写する時はプリセットはNT固定で、クセの強さ5段階を調節した画像を自分にもわかりやすく比較したいと思った。
数百万円する伝説的銘玉オールドレンズを10万円で味わえるのが高いと思うか、安いと思うか、である。ちなみに海外ではMS-OPTICS(宮崎光学)のレンズはすでに神格化されている。レンズは宮崎社長と家族によるハンドメイドなので生産本数が少ない。
その為、現行レンズといえども売り切れで入手が難しいレンズが多いので、気になるレンズがあれば所有しておくのもいいかもしれない。宮崎光学のレンズが生産されるのは宮崎社長が生前しているうちだけ。今のところは。
以上で今回のレビューを終わる。本日も素敵なオールドレンズライフをお過ごしください。