Carl Zeissの前玉凹みUltron 50mm f1.8 M42マウントがフォクトレンダーではない理由と写りの特徴
Carl Zeissの前玉凹みUltron 50mm f1.8 M42。Carl Zeissのウルトロンと聞いて不思議に思わないだろうか。そう、ウルトロンは元々フォクトレンダーがレンジファインダー向けに製造していたレンズだ。しかしこの凹みウルトロンの銘盤はCarl Zeiss銘だ。そして前玉が凹んでいる理由は何か?写りの特徴や製造本数、スペック等についても記述する。
ウルトロンはフォクトレンダー伝統のレンズでは?
ウルトロンはフォクトレンダー伝統のレンズ構成、レンズ名だ。なぜカールツァイス名なのか。この理由を解説する。1960年代、フォクトレンダーはカールツァイスに吸収合併された。そして一眼レフカメラ用「ICAREX(イカレックス)35」シリーズ用にウルトロンを製造する事となった。これが元々フォクトレンダー銘だったウルトロンがカールツァイス銘だという理由。次は、なぜ前玉が凹んでいるのかについて解説する。
すでに完成していたウルトロン50/1.8を改良してなぜ前玉を凹ませた?
ウルトロンは前玉に凹レンズを採用した6群7枚という特異なレンズ構成だ。先程も触れた様にフォクトレンダー時代のウルトロンは元々レンジファインダー機用のレンズだった。カールツァイスはこのレンジファインダー機用のレンズを一眼レフカメラ用として使う為にバックフォーカスを稼ぐ必要がある事に気付いた。逆に言えばバックフォーカスさえ稼げれば新しいレンズを開発しなくても、ほぼそのまま名玉ウルトロンを一眼レフカメラで使用できる。こうして、バックフォーカスを稼ぐために前玉に凹レンズを配置したという訳だ。
前玉凹Ultron 50mm F1.8はボケ量が圧倒的
前群1枚目のレンズを大きな凹レンズにしたこの特異なレンズ構成の影響でボケが他のレンズよりも大きいという噂がある。美しいボケと言えばケルンのマクロスイター50/1.8が有名だが、大きなボケと言えば、カールツァイスのウルトロン50/1.8である。…と言われている。実際にピントが合っている合焦部はしっかりと写り、それ以外は一気にボケる印象的な写りをする。
前玉凹みUltron 50mm f1.8の製造年数と製造本数
Ultron50/1.8が製造されたのは1968年から1970年までの2年間。一眼レフカメラのICAREX 35に搭載する交換レンズとしてTessar 50mm F2.8やSkoparex 35mm F3.5と共に市場供給された。レンズ全体の製造本数は約36000本で、うち約28000本がICAREX BM用(BMマウント)、約8000本がIcarex TM用(M42マウント)。
前玉凹みUltron 50mm f1.8のスペック
- 販売メーカー:Carl Zeiss
- 発売年:1966年
- 光学レンズ構成:6群7枚ウルトロン型
- 最短撮影距離:0.45m
- 絞り値:開放最大F1.8-最小F16
- マウント:M42
- 絞り羽根枚数:10枚
- フィルター径:56mm
- 重量:284g
クセナーやウルトロンは軍需用レンズだった
1936年にドイツに軍需用レンズの開発と製造を目的として設立された「Jos. Schneider & Co., Optische Werke, Göttingen」は通称「Isco(イスコ)」。イスコのレンズ開発はヨゼフ・シュナイダーとアルブレヒト・ウィルヘルム・トロニエが担当。Xenar(クセナー)やUltron(ウルトロン)は軍需用レンズとして使用されていた。戦後1946年には映画用のプロジェクターレンズを開発。
イスコの写真用レンズ
- Westar
- Westanar
- Westron
- Westromat
- Isco-Mat
- Iscotar
- Isconar
- Tele-Iscaron
- Iscorama
参考文献:出品者のひとりごと… , mik.hamaのいい加減にします , アイキャッチ画像転用元:flickr
前玉凹みUltron 50mm f1.8の作例
まだ入手前なので前玉凹みUltron 50mm f1.8を入手したら作例を挙げる。