Leitz Summar 50mm f2 review作例 滲むクセ玉銘玉 戦前ライカズマール5cmの描写
Leitz Summar 50mm f2(ズマール50mm f2)のReview作例。時は戦前、ライカ初のダブルガウス型を採用したズマールは画面全体を覆いつくすフレアーや美しい虹ゴースト、ふんわりと柔らかい描写でエモい写真が撮れるオールドレンズとしてオールドレンズ初心者から中上級者まで人気がある。中古相場も安いと5万円前後で入手可能でおすすめだ。
Summar 50mm f2(ズマール5cm/f2)とは
Summar50mmF2はバルナックライカ用に戦前1933年~1940年にかけて製造されたLeitz(現Leicaライカ)初のダブルガウス型を採用した大口径ハイスピードレンズ。ちなみにMeyer初のダブルガウス型レンズは超クセ玉Domironで写りはかなり個性的だ。
沈胴式ズマールはノンコート。写りの特徴は開放の滲みや全体的に柔らかい描写で内面反射の影響からフレアーと虹ゴーストが発生、グルグルボケの兆候も見られるクセ玉。
固定鏡胴で絞り羽根枚数が多い「ひょっとこズマール」や、先端がブラックペイントの「先黒ズマール」、南国仕様の「トロッペン」など複数のバリエーションが存在する。発売当初は固定鏡胴だがズマール全12万本中2000本と少なくレア。
初期の個体は鏡胴がニッケル仕上げで最小絞り値f16のモデルが存在する。後に沈胴式となりシルバークローム仕上げとなり、絞り値もf12.5に変更された。
Summar 5cm f2(ズマール 50mm f2)のスペック
- 製造メーカー:Leitz(現Leica)
- 製造年:1933~1940年
- Mount:ライカL39
- レンズ構成:4群6枚ダブルガウス型
- 焦点距離:50mm
- 画角:45度
- 絞り値:開放最大f2~最小f12.5
- 絞り羽根枚数:6枚、六角絞り
- 最短撮影距離:1m
- 重量:約173g(実測値)
- フィルター径:A36(外形36mmかぶせ)、内径34mm
- フード:SOOMP
- 中古市場価格:4~8万円(2022年時点)
Summar 50mm f2のレンズ構成図
1933年に発売開始されたLeitz初の大口径4群6枚ダブルガウス型バルナックライカ用標準レンズ。開放で滲み中央部の解像度も低くノンコートで内面反射によりフレアーが発生しやすい為当時の評価は低かったと言われている。
しかし、当時の貨幣価値(現在ドル換算)で$2000と高価なレンズで発売から約1年以上に渡りバックオーダーされ続ける程望まれていたレンズだった。Summarは1933年~1940年の7年間で123,000本生産された。
そして1939年に4群7枚構成のSummitar(ズミター)に置き換わる。ズミターのレンズ構成はKodak社のEktraカメラ用のEktar 50mm f1.9に似ている。1930年代に入ると対象型ダブルガウスのPlanarを原型とした変形ダブルガウスが数多く現れた。
多くの変形ガウス型は前群の凹部分を分離してベンディングを別々に行うものだったが、特に明るいガウス型レンズは後群の凸エレメントを2つに割りそれぞれ別にベンディングを行った。また、外側の凸エレメントを1つか両方とも貼り合わせタブレットに置き換えた構成のレンズもあった。
参考文献:KEN ROCKWELL , A singular eye
ダブルガウスの歴史年表
- 1896年 Carl Zeiss社のPaul RudolphがPlanar f4.5を発明
- 1920年 Taylor & Hobson社のHorace William ReeがSeries O(Opic)を発明→1931年Speed Panchro
- 1925年 Schneider-Kreuznach社のAlbrecht Wilhelm TronnierがXenon 50mm f2を開発
- 1927年 Carl Zeiss社のWilli Walter MerteがBiotar 58mm f2を開発
- 1931年 Taylor & Hobson社のHorace William ReeがOpicをシネマ用に改良したSpeed Panchroを発明
- 1933年 Ernst Leitz社のMax Berek(Walter Mandlerと共同?)がSummar 50mm f2を開発
Ernst Leitz社のダブルガウスの歴史年表
- 1933年~1940年 Summar 50mm f2 沈胴 L39 122,860本(うち2000本は固定鏡胴)
- 1939年~1955年 Summitar 50mm f2 沈胴 L39 170,761本
- 1953年~1960年 Summicron 50mm f2 1st 沈胴 L39 60,680本
- 1960年~1963年 Summicron 50mm f2 固定鏡胴 L39 1,160本
- 1954年~1960年 Summicron 50mm f2 1st 沈胴 ライカM 57702本
- 1956年~1958年 Summicron 50mm f2 1st 固定鏡胴 ライカM 64,000本 メガネ付き56,000本=合計120,000本
- 1969年 Summicron 50mm f2 2nd 固定鏡胴 ライカM 製造本数不明
- 1979年 Summicron 50mm f2 3rd 固定鏡胴 ライカM 製造本数不明
- 1994年 Summicron 50mm f2 4th 現行 固定鏡胴 ライカM 製造本数不明
Leitz Xenonダブルガウスの歴史
Schneider-KreuznachがLeitzへOEM供給したLeitz Xenonの歴史年表。ただ、裏話があって実はLeitzがシュナイダーの技術提供を受けて製造はLeitzが行ったとも言われている。
- 1936年~1956年 Xenon 50mm f1.5 L39 6,190本
- 1949年~1960年 Summarit 50mm f1.5 L39 39,181本
- 1954年~1960年 Summarit 50mm f1.5 ライカM 25,689本
- 1959年~1961年 Summilux 50mm f1.4 1st ライカM 12,000本
- 1960年~1963年 Summilux 50mm f1.4 1st L39 548本
- 1962年~1994年 Summilux 50mm f1.4 ライカM 製造本数不明
- 1966~1975年 Noctilux 50mm f1.2 ライカM 2,000本
- 1976年 Noctilux 50mm f1 ライカM 製造本数不明
- 1995年~ Suumilux 50mm f1.4 ライカM 製造本数不明
Summar 50mm f2のレンズ外観レビュー
筆者が所有しているズマールのシリアルナンバーは218979で1934年製造。シルバークローム仕上げ。f12.5のモデル。ライカ初のダブルガウス型大口径の標準レンズ。
α7Cが小さいから沈胴ズマールの小ささが際立たないがレンズは実測173gでヘリコイド付きマクロアダプターを装着して273g。
戦前の1934年、今から約90年前に製造されたレンズが世界大戦の戦火を潜り抜けて今こうして目の前にこれだけ美しい状態のSummarがあることは奇跡だと思うし巡り合わせだと思う。
初期はニッケル仕上げで選ぶ選択肢もあったがレンズ内部の状態を優先した。戦前のライカのレンズの作りは工芸品や時計のように精工で美しい。
これだけクリアーな光学。くもりやヘアラインやカビは皆無。小チリのみ。
そしてわかりづらいと思うが、この個体は美しいブルーのコーティングが施されていた。筆者バカなので清掃でエタノールたっぷり漬けてコーティング溶かしました(つд⊂)エーン
絞り羽根6枚だが、よく見ると複雑な形で羽根(ブレード)が嚙み合わさって閉じる。こだわりが感じられる。
Summar 50mm f2の作例レビュー jpeg撮って出し
撮影機材カメラはSony α7C、クリエイティブスタイルは基本NTで基本jpeg撮って出しでレンズの素性を探る。
ライカ初の大口径ダブルガウス。周辺の結像は甘い。この未完成で繊細なダブルガウスならではのマイルドな甘さが心地よい。
冬の早朝の朝日が線路の鉄柱や標識に注ぎ込みハイライトが滲む。
背景の夫婦のダウンジャケットが玉ボケになった。子供は遊びに夢中になって道路に飛び出すことがあるから注意してあげてね。
そもそもシチュエーションがエモい。
エモいでしかない。
奥に見える雪がかかった山は富士山。
エモさ爆発。
個体差はあるがきれいな虹ゴーストも出る。筆者は5本くらい撮り比べをして本レンズを購入した。
新宿ヨドバシカメラ
新宿の高層ビルと虹ゴースト。白黒だけど。
内輪差や遠心力を感じさせるmenのダッシュ力。左手と左足そろってる。
昭和レトロ。
マネキンが店員みたいで足がなくて焦った。
銀座数寄屋橋のスクランブル交差点。マスクは未来、令和の象徴となるか。
エモい。
手すりのハイライトの滲みがいい。戦前ノンコートのオールドレンズの割に諧調が豊富だと思う。jpeg撮って出し。
いつもマクロ側の撮影が多いが昔撮影した都会スナップで撮影した写真を見ていると中間~無限距離も楽しい。
中野の路地裏の作例もっとあるから出したい。路地裏好き。
Summar 50mm f2の写りの特徴まとめ
ズマールの写りの特徴は、ノンコートのダブルガウスらしいマイルドな残存収差が心地よい。滲み、フレア、ゴースト、今回グルグルの作例なくて申し訳ないがグルグルも発生、モノクロハマる、戦前ノンコートの割には諧調が豊富で間違いなくクセ玉と言えるがレンズ本来の性能はいい。
また、曇り玉やズマール特有の前玉にキズがあると確かに派手にベールがかかったようなズマールらしい描写になるが、筆者が所有している個体は光学の状態は美しい為、拍子抜けするほどよく写ってしまう。もう一本レンズにキズが入っている個体がほしい。
まとめ
実は美しい円環(真円)虹ゴーストが発生するズマールはもちろん筆者お気に入りのオールドレンズの一本だが、同じく戦前ライカを代表するHektor 50mm f2.5の淡く渋く滲むシネレンズのような写りも好みだ。今回のレビューは以上。本日も素敵なオールドレンズライフをお過ごしください。