Voigtlander HELIAR 40mm F2.8 aspherical Review作例 コシナフォクトレンダー
Voigtlander HELIAR 40mm F2.8 aspherical Review作例 コシナフォクトレンダー。レンズ構成と外観でジャケ買い?そうかもしれない。124年前のたった5枚のガラスで構成されるオールドレンズに非球面レンズを採用して現代版として復刻。ロマン溢れたのかよ。ヘリアーの柔らかく温かく優しい描写と独特な空気感を持つ世界観がエモい。Aspherical=非球面レンズ。
Heliarとは フォクトレンダー伝統のレンズ名
レンズ名でもありレンズ構成名でもあるHeliarは1900年にVoigtlanderのHans Harting(ハンス・ハルティング)が発明した。本レンズは、フォクトレンダー伝統のヘリアー型レンズ構成を現代に復刻した国産の銘玉。また、Voigtlanderはオーストリアのウィーンで1756年に創業された世界最古の光学メーカーでもある。
フォクトレンダーの株主シェーリンクは1956年にCarl Zeiss財団に株式を売却した。その後1999年にフォクトレンダーのカメラ用レンズは日本のコシナが製造することとなった。
今や日本のコシナが製造してる事実は改めて驚愕。LeitzのHektorもHeliar型のレンズ構成。コーティング技術の進歩や新しい硝材の発見、コンピューター設計の導入などヘリアーは今や絶滅危惧種というかコシナのみ製造。
2種類のHeliar
Heliarには2種類ある。 Cooke社のDenis Taylorが発明したTripretをベースとしてHans Hartingが設計した初代と、 Carl ZeissのPaul Rudolphが発明したProtar(元Anastigmatで後のTessarの後群を構成)を組み合わせてRobert Richterが設計したDynar(後にHeliar名に戻る)。今回レビューするHeliarは後者の設計思想を受け継いでいる。
Heliarの2つのレンズ構成
1900年の初代Heliarレンズ構成。始まりはトリプレットの発展型。感慨深い。今見ると無駄を全て削ぎ落したレンズ構成がとても新鮮。これでいいじゃんっていう。
1953年Heliarのレンズ構成。Zeiss Protarの血が入った方。現行Heliarの元もこれ。トロニエ設計。シュナイダーからフォクトレンダーにトロニエが転職したことすら衝撃。この後フォクトレンダーはZeissに吸収合併される。
Heliarの歴史
Heliarに限らず過渡期のレンズは他社が特許を取得したレンズ構成をライセンス契約して使用したり、微妙に変更を加えて設計したり、複数のレンズ構成のいいところを組み合わせたりして発展してきた。Heliarも然り。よってHeliar型レンズ構成に関係がある他社のレンズも一覧に掲載した。
- 1890年 Carl Zeiss社が写真部門を設立しPaul Rudolphが世界初の無収差レンズAnastigmat(無収差の意)を開発(後のProtar)
- 1894年 Cooke社のDenis TaylorがTripretを開発
- 1896年 Carl ZeissのPaul RudolphがPlanar f3.6を開発
- 1899年 Carl ZeissのPaul RudolphがProtar(元Anastigmat)を改良してUnarを開発
- 1900年 Voigtlander社のHans HartingがTripletの前群と後群を貼り合わせて色消しダブレットを採用したHeliar f4.5を開発
- 1902年 Carl ZeissのPaul RudolphがErnst Wanderslebと協力してTessar f6.3を開発
- 1902年 Voigtlander社のHans HartingがHeliarの対称性を崩してペッツバール和を抑制し非点収差の補正に成功した改良版の2代目Heliar f4.5を開発
- 1904年 Voigtlander社のRobert RichterがCarl Zeiss社Tessarの後群の接合部の正曲率による重要な効果に気づきHeliarに導入してDynar f5.5/f6を開発(ここで2種類のHeliar型が共存)
- 1921年 Voigtlander社のRobert RichterがTessarの後群Protarの貼り合わせをHeliarの前群と後群に採用して3代目Heliar f3.5/f4.5を開発
- 1926年 Voigtlander社のRobert RichterがUniversal Heliar f4.5を開発(最後の元祖Heliar型)
- 1949年 Schneider社のA.W.TronnierがVoigtlander社へ転職。Robert Richter版Protar思想のColor-Heliar f3.5をカラーフィルム対応として再設計し製品化(中判カメラ用)
初代Heliar f4.5はイエナガラスの新色消しダブレットを使用していたが、球面収差を補正できなかった為、結像は柔らかく階調もなだらかで全体的に軟らかい描写だった。これが雰囲気がいいレンズとして評判となり人物撮影用としても人気が高かった。
初代Heliarの設計は前群、後群が完全対称だったが、1902年に対称性を崩してペッツバール和を抑制し非点収差の補正に成功した改良版の2代目Heliarを開発している。
2代目Heliarと同年に登場したCarl Zeiss社Tessarの後群の接合部の正曲率による重要な効果に気づき、Heliarにも導入した。これが、1904年に発表されたDynar(ダイナー) f5.5/f6(設計は1902年)。
Dynarは開放F値がHeliar f4.5より一段暗いF5.5(F6)で価格もHeliarより安く販売されたが、本来はHeliarと同等以上の明るさにも対応できる光学性能を持っていた。非点収差を除く全ての収差特性でHeliarを上回っていた。
第1次世界大戦後の1921年にRobert Richter(ロバート・リヒター)博士が再設計し、1925年に3代目HeliarとしてF3.5の明るさで再登場した。
HELIAR 40mm F2.8 aspherical レンズ外観Review
シルバーもよかったが、純正フードを装着した方が全体的なバランスがよくかっこいい。しかし、フードは黒なのでツートンカラーになってしまい微妙だった。シルバー鏡胴のフードの黒とブラックペイント鏡胴のフードの黒は仕上げの色を変えてこだわってるそうだ。
こう見るとフードなしでもいいがボディに装着した時にね。デザインがメッチャかっこいい。現行AFレンズは外観がダサすぎる。こちらは小型軽量でデザインも写りもよし。
国産レンズですよ皆さん。「Sony純正レンズ」というキャッチコピーに惑わされていませんか?そのレンズ、どこの国で誰が作ってますか?ライカでさえ1975年からポルトガルで製造。コシナ世界一ですよ。
MFだけどね。それがいいでしょ。脱初心者の入口はMFかもしれない。「MFのメリット」もまとめましょうね。AFが有利な場合は被写体が速い速度で動き回る時だけ。
Heliar 50mm f3.5と50mm f1.5のデザインもクラシックで最高。焦点距離かぶるが用途が違うので3本とも欲しい。(予言通りコシナ沼か?)
有名なYouTuberが勧めるからとかではなく、自分で自分が好きなレンズを選んだ方がいいマジで。失敗する。沼の原因は他者からの影響を受けすぎること。自分で決めようホトトギス。
HELIAR 40mm F2.8 aspherical スペック
- メーカー:コシナフォクトレンダー
- 最小絞り値:F22
- レンズ構成:3群5枚ヘリアー型
- 画角:57°
- 絞り羽根枚数:10枚
- 最短撮影距離:0.7m
- 最大径×全長:52mm × 21.2mm
- フィルター径:34mm
- 重量:131g
- 専用フード付属
- カラー:シルバー & ブラックペイント
- 発売日:2022年3月30日
画像転用元:コシナフォクトレンダー
HELIAR 40mm F2.8 aspherical 作例Review
Sony α7CII (ILCE-7CM2)、クリエイティブルックはBWでjpeg撮って出し。いつも通り。レンズの素性を探る。初試写が一番ワクワクする。
曇り空はコントラスト出やすいから大好き。いい。思った通り現行だが古典的な5枚Heliar型レンズ構成なので(真ん中非球面だが)当然オールドレンズより高描写だが現行AFにはない暖かみと柔らかさがある。トーンも豊富だ。大好き。一発目で脳汁ブシャー。しかし一雨きそうだな。
エモかっこいい。新宿ど真ん中なのにゴーストタウンっぽい雰囲気がたまらない。
こんにちは。
現行では物足りない気がして一瞬Elmarに変えたのよ。これはLeitz Elmar 35mm f3.5。
いや、エルマーはいいんだ今日は。この直後大雨。元々天気予報雨だったけどね。足を下に付かないと全体重がお尻にかかって痛くありませんか?おじーちゃん。グルグルボケが妖気に見える。
途中でレンズをElmar35に変えて10分後に大雨。レンズを変えたらピタリとやんだ。これはHeliar。現行でもないオールドレンズでもない独特の空気感を持つ描写のコシナヘリアーいいなぁ。
空港パパラッチ的なノリで。ほんの一瞬撮影会。
世界観を作り出せるレンズ。かなり驚いた。他のレンズならこの環境下でどういう世界観になるのか。自分の感性が一緒なら似るのか?試写の旅は続く。
壁に謝る人。
シネマっぽい。Heliarと豪雨と被写体のファッションと屋内の照明の暗さとモノクロがハマった。
ザラザラ感と暗部の諧調がたまらない。フィルム映画っぽい雰囲気が好き。
雨が人々とビルに降り注ぎ、外はアスファルトを打ち付け跳ね返る大粒の雨粒が湿気と混じり合う。
Since 1970. ブランドの広告かよみたいな。
人生もスナップ。台本がないリセットがきかないリアル人生ゲーム。皆その主人公。せっかくなら自分らしく自分の色で生きよう。
緊張からの開放。シネマの世界。シャッターチャンスは二度とないし予定調和もない。スナップの醍醐味。
素の感情。皆各々の個性を活かして生きる世界になると最高。ありのままでいい。てか終始完全にスナップだった。俺らしい。
昔見た記憶と今目の前にある景色と感情を重ね合わせて今日もシャッターを切る。多分これからもずっと。
バイバイ。
ただいま。いつも通り1人で。これが無心での初試写になるのかな?出てくる画がやはり現行レンズっぽくて好きになれなかったので珍しくレタッチ。現行レンズで自作のハイコントラスト白黒にしてやった。
一年中花が朽ちないあじさいもある。俺は見てるよいつも君を。
現行は光源が星型というか放射線状になるから非常に使いづらい。コシナも同様か。なんとかならんかねこのダサい光源。これだけでオールドじゃないと無理だなと思う。
いつもの土手。これは撮って出し。
朝が美しくて。山が恋しくて。空がきれいで。
自作のハイコントラスト白黒。
陣地取り。俺は別に。地球は母だから。
霞む大都会東京。となんか生えてるぶっとい棒。
スナップの語源は隠し撮り。いかにカメラマンと悟られないか。
でかいカメラにでかいレンズ付けて「どや!」と機材自慢の目立ちたがり屋はカメラマンじゃないと思う。芸人。あ、どっちも芸か。
人のことはどうでもいい。自分は自分の道を信じて突き進めばいい。
自分だけ知らない世界に迷い込んだような感覚が幼少期から消えない。
夏が終わる
バイバイ。
Heliar 40mm f2.8 aspherical 写りの特徴Review
- 柔らかく温かみがあり繊細な描写
- 独特な空気感と世界観が最高
- コントラストは低すぎず高過ぎずモノクロで諧調もしっかり出揃う
- シネレンズっぽい
- コシナすげぇこだわりエグい
- レンズ構成は魔力を秘めていると思う
- 40mm f2.8というスペックは自分の撮影スタイルや被写体との間合いにハマった
- 人物撮影に用いられてきたレンズ構成の意味が分かるような気がした
- 写り好みで小型軽量で最高コスパもよくて最高
- 後日試写したらやはり現行は写り過ぎて物足りなかった
- カラーは優しくモノクロはパリッと写る
- 光源が現行らしく光線状になるので逆光は使いづらい
- やはりオールドが好き
まとめ
自分が長らく求めていた絶妙なラインの写りを叩き出してくれるレンズだった。まだ初試写だったのでガンガン使ってレンズと対話していきたい。
どこかの異次元にタイムスリップしていつも通りスナップしてる感覚が楽しかった。そしてHeliar最高。やはり国産MF素晴らしい。オールドレンズ卒業か?どっちも良さがあるが。
フォクトレンダーの歴史の重みやレンズ構成の知識、数々のレンズを使ってきてMF1本選ぶなら…で選び、今こうしてこのレンズに辿り着いただけか。次はコシナフォクトレンダー沼とスナップポートレート沼にハマろうか。
今回は以上。本日も素敵なオールドレンズライフをお過ごしください。