Leica旧エルマー Elmar 50mm f3.5 Early レビュー作例 ライカ伝説の始まり 銘玉オールドレンズ
Leica旧エルマー Elmar 50mm f3.5 Early レビュー作例と見分け方
ライカはエルマーに始まりエルマーに終わる
Leica 旧エルマーとは Elmar 50mm f3.5 Early
旧エルマーとは。新エルマーはCarl Zeiss Jenaの子会社Schott社が製造する通称イエナガラスを使用しているが、旧エルマーはGerz社のSendlinger(センドリンガー)硝子工場で製造されたガラスを使用している。旧エルマーは本数が少なく希少で写りもいい為マニアの間で高額で取引されている。
C型Leicaに固定装着されていたレンズをくり抜きOマークの機体間互換鏡胴に収めて交換式レンズとして使用できるようにしたもの。鏡胴の長さや焦点距離、写りの特性も違う複数の旧エルマーが存在する。カメラボディ13100以前で約13000台なのでレンズ単体の旧エルマーの本数は13000本以下。ショートは56548台。
Elmaxは1923年から製造された。最高群が3枚貼り合わせだったがコストが高く製造に手間もかかった。当時としては極めて屈曲率が高く色彩拡散度が低い新種ガラスをゲルツが開発した。当時Leitz社はZeissのショット社よりゲルツとの関係が良好だった為、早速この新種ガラスを使用してエルマックスよりさらに優れたElmarを開発。後群3枚貼り合わせを2枚に減らした。これが旧エルマー。
- Elmax=Ernst Leitz + Max Berek
- Elmar=Elmax + Tessar
ショット製のガラスが悪いということではなく、やはり他社へ供給するガラスより自社で使用するガラスに最新のものを使うのが人間であるし、ゲルツの新種のガラスの屈曲率が高く3群5枚のElmaxから3群4枚へ1枚ガラスを減らして、同等かそれ以上の描写を実現したのが旧エルマーということ。
ゲルツ社は軍用としてガラスやレンズを供給していたが、軍用としてレンズを供給できる会社がドイツで1社へと変更され、Zeissが選ばれ、経営が苦しくなったゲルツはZeissに吸収合併された。
1926年5月8日ゲルツのドイツ本社はIca(イカ)、Contessa-Nettel AG(コンテッサ・ネッテル)、Erneman(エルネマン)と合併し、同年10月1日に新会社Zeiss Ikon(ツァイス・イコン)が設立され、ゲルツはアメリカ支社とオーストリア支社が残ったが後にシュナイダーに吸収合併された。
Leica 旧エルマーの見分け方 Elmar 50mm f3.5 Early
- ニッケルエルマー
- 通常の新エルマーより鏡胴の長さが短い
- シリアルナンバーなし
- 前玉内側のねじ切りなし
- ピントリング全回転
- ピントリングにノッチなし、形状も違う
- ピントリングノブ裏の鏡胴番号が0、1、3番のいずれか
- 4番はロングとショートがあってショートは3番と焦点距離が同じと推測
- 赤エルマーの鏡胴に入った旧エルマーも存在する
- その他半回転の旧エルマーや鏡胴番号が違うが3番と同じ長さの鏡胴も存在する
- 前玉のネジピッチが狭く通常の新エルマーのA36(19mm)フィルターは装着不可
- 後玉の抑えの構造が非常に細かい同心円状の突起構造になっている
一番短い3番のレンズの重量は103g、全長約29mm。焦点距離は0番が50.5mm、1番が49.6mm、3番が48.6mm、4番ショートは3番と一緒。その他まだまだ謎多し。
Leica 新エルマーのバージョン Elmar 50mm f3.5
4番:Ⅱ型の頃。ニッケル。ピントリング全回転。ピントノブにノッチなし。無限遠ロックあり。ヘリコイドのガタツキ防止として一部をえぐり板バネで固定。全バージョン中一番手間がかけられている。
5番:Ⅲ型スタンダードの頃。ニッケル全回転。ピントノブにノッチあり。ノッチのノブにポッチ付き。無限遠ロックあり。内部の板バネ廃止。
6番:戦前戦後合わせて最も多い。ほとんどがクローム鏡胴だがニッケルも存在する。ピントリング半回転。赤エルマーもあり。
7番:Lマウント最後のバージョン。6番と同じ位か次に多い。赤エルマー直前の頃前飾り板がツヤ消しクローム。赤エルマーもあり。
Leica 旧エルマー Elmar 50mm f3.5 Early オールドレンズ外観
本個体は1番だが鏡胴の長さや重量が3番と同一なので中身は3番と勝手に思ってる。ライカ純正改造Factory Conversion。旧エルマーはC. P. Goerz社のSendlinger(センドリンガー)硝子工場で製造されたガラスを使用している。
oldlens.comの岡田氏曰く「前玉のねじ切りなしが旧エルマーとして何よりの証拠」とのこと。が、先程記述した旧エルマーの見分け方と同じ解説もしている。
これが終着駅かな。とか言っとく。
佇まいよき。
オスカーバルナックやマックスベレーク、エルンストライツ二世の時代の伝説の銘玉。感慨深い。
赤エルマーの鏡胴に入った旧エルマーと3番の旧エルマーと並べて比較したが鏡胴の全長は一緒だった。これが購入の決め手となった。
ベリーショート。鏡胴のガタツキもなし。
この鏡胴の短さがカメラボディに装着した時にハマる。
Leica 旧エルマーの作例と描写 Elmar 50mm f3.5 Early
Sony α7CⅡ、jpeg撮って出し。意地悪な環境下でもシャドウをきっちり描く。戦前ノンコートでこの描写。これが旧エルマー。
コクとテリがある。渋い。暗部の粘りもある。新エルマーとは明らかに写りが違う。新エルマーはゴーストガッツリ発生。
約100年前のレンズ。同じ場所の100年前はどんな景色だっただろう。
ファーストキッチン懐かしい。自分が学生の頃の記憶と重ねる。
なぜかこの辺に来てしまう。DNAか前世の記憶か。
スカイツリー。結界らしい。あと東京タワーは雌でスカイツリーは雄らしい。
エモい。
クリエイティブルックNT。ニュートラルな発色がいい。APS-Cモードでボディ内クロップ。
クリエイティブルックST。コントラストの付き方もよくなり、かなり印象が変わる。が、個人的にはやはり低彩度で優しいNTが好き。
ボディ内設定でクロップして取って出し。ST。
絞っても立体感。
早朝。日常。古いレンズは加工しなくてもうまくシャドウがプライベートを隠してくれるからスナップにもってこい。
バイバイ。
旧エルマーで試写した感想レビュー 描写と写りの特徴
- 新エルマーより逆光に強い
- 虹ゴーストは発生しない
- 戦前にしては隅まで緻密に描き周辺も結像している部類
- ピント面やハイライトが滲みエモい
- シャドウがしっかり粘っている
- 高描写だが芸術的、アーティスティックな写り
- 少しグズついた感じが戦前ノンコートのエモさ
- 旧エルマーでも0,1,3番,赤エルマーの鏡胴に入った個体により描写は違う
- 所有欲を満たしてくれる
- ベリーショート旧エルマーは外観が最高でα7CⅡに装着しても似合う
まとめ
オスカーバルナックは子供の頃から風景画家志望で父に反対されて機械工として渡り修行をしてLeitzの直前はZeissの子会社で勤務、その間は休日に山へ登り風景写真を撮っていた。そんな歴史に思いを馳せながらシャッターを切る。至高の贅沢。
新品で高価な機材を買ってドヤドヤ、オラオラは頭の中身がない薄っぺらい思想で非常にガキっぽくて苦笑いしてしまう。カメラやレンズは歴史の深みのティスティングが至高の贅沢。故人へのリスペクト。現在のライカはロゴの所有権をどこの企業が持っているかだけ。お金で買える「Leica」というロゴ。そのカメラやレンズの中身は何ですか?
自分の気持ちに嘘をついて生きると苦しい。自分に自信を持って、自分に正直に生きよう。ライカの楽しみ方は先人の偉人たちへの思いを馳せ、一体となり、今でも当時の機材を使用できる幸せと喜びを嚙みしめながら写真を楽しむ事だと思う也。
Leica 新エルマー50mm f3.5 L 6番のレビュー作例はこちら。今回は以上。本日も素敵なオールドレンズライフをお過ごしください。