Leica Summarit 50mm f1.5 レビュー作例 ライカズマリット クセ玉銘玉おすすめ神オールドレンズ
Leica Summarit 50mm f1.5 レビュー作例 ライカズマリット クセ玉銘玉おすすめ神オールドレンズ
Summarit 50mm f1.5とは ライカズマリット
Carl ZeissのSonnar50mm f1.5に対抗してシュナイダーからOEM提供されていたXenon 50mm f1.5の改良版がSummarit。当時のLeitz社最高責任者Max Berek最後の遺産でもあるズマリットは後のSummiluxの先祖でもあり、その源流はSchneider-KreuznachのLeitz Xenon。Xenonを改良してSummarit、Summaritを改良してSummilux。
Taylor & Hobson社の刻印が入ったXenonが存在する理由は、当時イギリスにおいてXenonの特許権を所有していたのがTaylor & Hobsonだったから。テーラーホブソンは自社で設計したレンズの製造販売を行う許可をシュナイダーに許可していた為、シュナイダーではXenon銘が使用されている。
そもそもダブルガウス型レンズはテーラーホブソンのH.W.ReeのOpicが源流でXenon 50mm f2はOpicを模倣したもの。レンズの歴史を振り返ると特許取得とその特許を利用して自社レンズ名を付けて販売したりOEM生産を依頼して販売するなど大人の事情がこれでもかという程見える。
Summaritはライカ製ではなくシュナイダー製OEM
レンズマニアやライカ好きの間では常識だが、Summarit(ズマリット)は純血のLeica(Leitz)ではない。SummaritはSchneider(シュナイダー)社のXenon 5cm f1.5を元に設計された。初期のズマリットの一部にはクセノン同様「Taylor & Hobson」の刻印が施され、中身も同一だったようだ。
Xenon50mmF1.5は1936年にシュナイダーのレンズ設計士アルブレヒト・ウィルヘルム・トロニエ(Albrecht Wilhelm Tronnier)が開発したハイスピードレンズで、ズマリットの原型。他にもSuper Angulonなどシュナイダーはライカに技術提供していたし、さらにはHologonはZeissからOEM供給されたものだ。
というのも、ライカは元々顕微鏡メーカーで1905年にカメラ業界に参入したばかりの業界では新参者で、当時は後にZeissに吸収合併されるヒュッティヒにカメラの製造を依頼していたくらいだ。バルナックライカに合わせてレンズを鉱物学者のべレク教授が先人のZeissなどの他社が特許を取得しているレンズ構成を元に設計していった。
話しを戻す。よって、ズマリットはライカではなくシュナイダーの製品として認識している人は多い。が、近年のライカファンは寛容なのか、ズマリットはライカじゃないとかスーパーアンギュロンもライカじゃないから認めないなどと批判的な意見を持つ人は少ないようだ。
ちなみに、Summaritの後継モデルは「貴婦人」で有名なSummilux 50mm f1.4。時系列の歴史で振り返ると、ライカ初のガウス型50mmはSummarで、次にSummicron、Sumitar、Summarit、Summilux。また、Noctiluxもガウス。
当時のXenon、Summaritは、Carl Zeissのレンズ設計士ベルテレが開発したSonnarのシャープで切れ味鋭く収差が適切に補正された完成度レンズに完敗した。しかし、時代を経て、ミラーレスカメラの台頭と普及により収差を活かした表現が再評価されオールドレンズブームが巻き起こっている。
また、技術と硝材の進歩によりガウスがゾナーを追い越し、バックフォーカスが長いレンジファインダー機から一眼レフカメラが主流となっていくにつれてゾナーは次第に姿を消していった。
ズマリット購入 ライカのオールドレンズ
複数本試写して写りや状態が一番いい個体を購入。また出費が。被写体の引き寄せやテンション上がり具合も相性がよく気に入った。ピント面の美しい滲み、グルグルボケ、フレアーや虹ゴーストなどの収差も満載。
この時代のSummaitは戦前のSummarもそうだが前玉が非常に柔らかく拭き傷が付きやすい。さらにコーティングも剝がれやすいので状態がいい個体を探すのは困難。
筆者も2年間程あれこれ迷い保留してきたが、今回も諦める為に安く気になっていた個体を確かめに都内の某実店舗に行ったところ、価格や状態が違うズマリットが4本あり撮り比べをして一番状態がいい個体が欲しくなってしまった。
Summarit 50mm f1.5のスペック
- メーカー:Ernst Leitz
- 製造国:ドイツ ウェッツラー(少数本カナダ製もあり)
- 製造期間:1949-1960年
- マウント:L39,ライカL,ライカスクリュー,LTM(同一マウント)
- レンズ構成:5群7枚ダブルガウス型
- 最小絞り値:f16
- 絞り羽根枚数:15枚
- フィルター径:41mm
- 最短撮影距離:1m
- 重量:実測値306g(320gと記載している文献が多いが)
- 製造本数:39181本
- 中古相場:程度により80,000~160,000円(2024年7月現在)
ライカMマウントも1954年から製造されている。製造期間や製造本数、重量などはL39に限った情報。
Summarit50mm f1.5とSummilux 50mm f1.4のレンズ構成図は似ている
似ているも何も貴婦人SummiluxはSummaritの改良版でSummaritはLeitz Xenon 50mm f1.5の改良版。Xenonはシュナイダー製。よって貴婦人ズミルックスはシュナイダーの血が流れているので純血ライカでない。覚えておかないと恥ずかしいので覚えておこう。ズマリット最初期は中身丸々Xenonの個体もある。
Leitz Xenon 50mm f1.5(シュナイダー) レンズ構成図
Leica Summarit 50mm f1.5 レンズ構成図
Leica Summilux 50mm f1.4 レンズ構成図
ね、ほとんど一緒。筆者はレンズのデザインが貴婦人よりズマリットの方が芸術的だと感じたのでズマリットを購入。製造本数が多いので貴婦人より安いし。
Summarit 50mm f1.5オールドレンズ外観レビュー
Sony α7CⅡ、FE 24-50mm F2.8 G(SEL2450G)で撮影。ズマリットはコーティングが剝がれやすいがメッチャ状態がいい個体に巡り合えた。
当時はガラスを坩堝で超高温で溶融して製造していたので気泡は優れたレンズの証。気泡は気にせんでえぇよ。写りにも全く影響ないし、コストをかけた贅沢レンズの証拠。
佇まいがよき。高級感もある。貴婦人Summiluxと並べて比較したことがあるがSummaritの方がデザインがよくかっこいい。店員さんに「ズマリットの方がくびれやメリハリがあってデザインかわいいですよね、貴婦人と比べてデザインでズマリットをジャケ買いする人結構いるんじゃないですか?」と聞いたら「そうなんですよ、意外とそういう方いるんですよ。」と回答があった。だよね。
後玉もコーティングはバッチリ残ってる。「それは相当レベルが高い。普通そこまで気付かないですよ。」と言われた位些細なヘリコイドの動作の引っかかりが気になったが、マウント部の余分なグリスを拭いたらスルスル快調になってよかった。
やっとSummaritだよ。ライツクセノンと貴婦人を同時に手に入れたようだよ。真ん中の子。
整備済みで動作も快調。
で、思ったんだけど、近接に限っては現行ズームレンズのGより50年前のマクロオールドレンズの方が写りいいかもしれない。最近ずっとレンズの物撮りに使ってるマクロタクマーの話ね。
好き好き。
Wetzlar製造ですよ。1974年位にウィルドに買収されてすぐにウェッツラー工場は閉鎖されて職人6000人以上解雇されたからね。Ernst Leitz家も経営から退いたし。なのでやはりそれ以前の本物のライカが好き。
もちろん無限遠もバッチリ。
Summarit 50mm f1.5の作例
Sony α7CⅡ、jpeg撮って出し。購入時に早速レンズを付けてスナップ。
こんにちは。前かごにも乗ってた。落ちないでね。いい毛並みですね。暑いよね、水飲ませてもらいな。
夏、蝉、日傘、東京上野。
「お父さんこっち来て~」と泣きわめく子供。父は20m位離れたところで座りながら「歩いておいで」と言っていた。なんでも子のいう事聞くと将来本人の為にならないからね。正解。ずっと泣いてた。
相合傘。
普段ハイスピードレンズでスナップしないからこんなに前ボケ大きくて滲むの?と新鮮だった。野口英世。
子供って無垢でかわいいよな。俺も子供だったんだぜ。
メッチャつらそうに汗ポタポタ垂らしながら二点倒立でしゃちほこ?やってたけど誰も観客いなくて吐きそうになりながらどこかへ向かっていた。(トイレかな)
全体的に香港の夏っぽい雰囲気で好き。
レンズの重量が重いという理由で避けてきたSummaritだが初試写で一目惚れ。写りも被写体の引き寄せもいいしテンションを上げてくれる。筆者はオールドレンズをパワーストーンのように思っている。
滲みと前ボケがいい。Summaritよき。
熱気、夏、上野。
逆にかっこいい。聖書のアダムとイブの創世記に由来する伝説はある意味本当かもしれない。
不忍池。ここ異空間。天国へのゲートがある。
仏教の世界で蓮の花は仏の心。蓮の花は泥水の中でも美しく清らかな花を咲かせる為、この世からあの世へ往く様であり、我々も現世(娑婆)という汚れた世界に生きながら蓮の花の様に美しい花を咲かせたい。現世(娑婆)で身に付いた汚れを浄化してあの世で仏に生まれ変わろうという意味がある蓮の花。三途の川を渡る時は蓮の葉をお船代わりとするとも言われている。
多国籍国家になりつつある日本。君はどう生きる?
翌日たまらずもう一度試写へ持ち出す。
待ちに待った夏休み。
昔の自分の姿に記憶を重ねる。
無心でシャッターを切っている瞬間が好きだと久しぶりに思い出した。
木に生えた苔。生命体。かわいい。この状況でグルグルボケ発生。
環境にもよるがゴースト内のコントラストが低下しにくい場合もある。これはレンズを選ぶ際に試写して一番状態がいい個体を購入したから。Summaitは個体差が非常に大きい。
今日はグルグルとゴーストと花マクロのチェックをしたかったのよ。
ゴーストなしとありバージョンで遊ぶ。
ゴーストなしでグルグル強調してピント面の立体感を表現するのもいいね。
ハイライト飛ばし気味でフレアーとゴーストで包み込みエモく。
似た構図でゴーストの変化を探る。
ズマリットよき。
Summarit 50mm f1.5 写りの特徴レビュー
- オールドレンズらしい収差の嵐
- ピント面の滲み、ハイライトはさらに滲む
- 逆光時フレアー、虹ゴースト
- グルグルボケ発生しやすい
- 開放はやや軟調気味なので諧調は豊富
- 開放の収差と優しい描写を楽しむべき
- 1段絞ってf2で急激に高描写
- 2段絞ってf2.8で各収差はかなり改善、高コントラストで硬派な描写
- 3段絞ってf4ですでに最高画質に見えるがそれ以降は大して変化なし
- カリカリにチューニング施したF1カーの様なセッティング
まとめ
写りも気に入ったし2日連続で外に連れ出してくれたので感謝している。コンピューター設計になる前のオールドレンズは個体差が大きいので、実店舗で撮り比べしてから購入することをおすすめする。今回は複数本撮り比べして一番写りがよく状態もいい個体に巡り合えたので愛用していこうと思う。
言葉ではうまく説明できないが吐き出す画が好きで手にしてカメラボディに装着した時のワクワク感がたまらない。クセ玉飽きてきたから渋い画が撮りたいと思っていたが、またライカのクセ玉に戻ってきた。色々オールドレンズを試してきたが、歴史を知れば知る程Leitz時代のレンズは魅力的だなと再認識。
今回は以上。本日も素敵なオールドレンズライフをお過ごしください。