Leitz Summicron 35mm f2 8枚玉 レビュー作例ブログ ライカ伝説の銘玉神オールドレンズ ズミクロン
Leitz Summicron 35mm f2 8枚玉 レビュー作例ブログ ライカ伝説の銘玉神オールドレンズ ズミクロン第一世代。やっぱ8枚玉すげぇ。地球の恵みである鉱物だけを使用したオールドレンズ。古いものには妖気や霊力が宿る。8よ横にすると∞無限。何かを引き寄せる力があると感じた。しばしこの流れに身を委ねようか。そんなことを想った雨が降る土曜の早朝。そしてまた今日も君のことを想い出す。
Leitz Summicron 35mm f2 ズミクロン8枚玉 第一世代とは
Canada Leitzで設計製造された、いわゆるライカ伝説の8枚玉ズミクロン第一世代。日本では通称「8枚玉」で「ズミクロン35mm第一世代」とはあまり言わない。たまに1st(ファースト)と呼ぶ。海外で通称は、V1(Version 1)か8Elements(8枚構成)と表現される。これらは全て同一の意味。
なぜ8枚玉が「伝説」なのか。それは、Ernst Leitz社が最盛期だったM3、M2時代に1958年フォトキナで発表されたレンズで、焦点距離35mmでLeitz初のF2であり、21mm f4の9枚構成Super Angulon(スーパーアンギュロン)に次ぐレンズ8枚を使用した贅沢なレンズだったから。
同時期に発表されたドイツで設計開発、製造されたSummaron 35mm f2.8の方が当時は人気があり製造本数も多く光学もデザインも変更することなくロングセラーとなっていった。それに対してカナダで設計開発製造された8枚玉はコストダウンして6枚玉→7枚玉と光学もデザインも変更されて生き残っていった。
少し重複するが8枚玉の設計、開発、製造はCanada Leitz社のWalther Mandler(ウォルターマンドラー)が担当し、後に「Leitz Wetzlar Made in Germany」と刻印されたドイツ製モデルも登場した。
補足:ウォルター・マンドラーはCanada Leitzのレンズ設計部長でありSummicron 50mmやSummilux 35mm(球面ズミルックス)、7枚構成のElcanなどの設計も手掛けていて、ライカで初めてコンピューター設計を取り入れた人物でもある。
Summicron 35mm f2 8枚玉 6枚玉 7枚玉 違い
第一世代が8枚玉、第二世代が6枚玉、第三世代が7枚玉。8枚6枚7枚の数字はレンズの枚数。
単純にレンズ8枚より6枚の方がガラス枚数が少なくコストが節約できる。第二世代の6枚玉は第一世代の8枚玉に比べて鏡胴や絞り羽根、ピントリングなどの作りも明らかに安っぽくなったのでコストダウンされたと噂されたが当時のLeitz社は「8枚玉よりコントラストが高く写りが改善された。」と謳い発表していた。
- 1958-1969年 6群8枚 8枚玉 約2万本 150~180g(実際に複数測定したところ不規則にバラツキがあった)
- 1969-1979年 4群6枚 6枚玉 約2万本 170g
- 1979-1997年 5群7枚 7枚玉 不明(コンピューター設計採用) 前期190g 後期150g クローム250g
ズミクロン35mm 8枚玉の写りは特別で伝説なのか
答えはNo。ただ、筆者は唯一無二の写りだと感じて好きだ。しかし、それは高描写でよく写るという意味ではなくむしろ真逆の意味だ。評判や価格の割には写らず、独特な空気感があり、ある種の恐怖の様な臨場感があり個性的な描写だと感じた。
そう、勘違いしないでほしいのは、8枚玉は一番よく写るレンズだから伝説という訳ではないし、とてもよく写るから高額なのではない。実際に6枚玉は多少滲むがライカらいしい味わいがあるし、7枚玉の方がより高描写でよく写る。
ただ、使い手(カメラマン)が求める写りはどれなのか。8枚玉は黄金時代ライカの歴史背景とレンズ構成、作りが精工でデザインも唯一無二なので文化遺産のような立ち位置として人気が高い。骨董品に近い位置付けだ。
また、「8」という数字は縁起がよく、90度回転させると「∞(無限)」になり縁起がいいなので中国人の富裕層が投資対象も兼ねて8枚玉を買い漁り中古価格が高騰しているとも言われている。
8枚玉の写りはコントラストが低くいわゆる眠い画。諧調(トーン)も若干省略された感じでシャドウが潰れるのはやや早く感じるが、実は潰れていなく奥の奥までしっかり描いている。恐怖というか心霊写真のような圧倒的インパクトを与える描写が叩き出され身震いした。
そして、テレ側の遠景描写があまりよくない。その反面、ヘリコイド付きマクロアダプター装着してレンズ本来の性能を超えたマクロ側の描写は素晴らしく中央部の解像力や描写は圧倒的。これには驚いた。
8枚玉はマクロ側から中間距離を得意としている。f2という明るさの割に被写界深度が深くピントが合わせやすくスナップに向いている。この点も筆者の撮影スタイルと相性がよかった。オールドレンズは個性がありスイートスポットが違うので、そのレンズごとの特徴を見出してそれを活かした撮影をしてあげるとレンズ本来の持ち味が出て素晴らしい写真が撮れるはずだ。
どの世代のズミクロン35mmがいいか。一般的によく写るレンズなら、コントラストが改善された2nd 6枚玉や3rd 7枚玉の方が上だ。あとは好みの問題。
あくまで80年以上昔のオールドレンズだ。普段から現行レンズを使用していてオールドレンズを使用しないカメラマンにとっては法外に高額な謎の中古レンズでしかない。なので、オールドレンズ初心者にはおすすめしない。
が、あらゆるオールドレンズを試してきて誰も気付かない奥に潜む地味でマニアックな描写の味わいを噛みしめることができるなら買いだと思う。レンズ進化の過程で本レンズにしかない8枚玉という天然のエフェクトがたまらない。
8枚玉から6枚玉へコストダウンされた当時の歴史背景
日本のカメラメーカーは、レンジファインダーで金字塔を打ち立てたライカM3には太刀打ちできないと潔く諦め、一眼レフカメラの開発に力を入れて大量生産してより安価で提供してカメラを一般家庭に普及させる戦略で大成功を収めた。
1960年代、あっという間に日本のカメラメーカーがLeicaを追い抜きライカの経営は苦しくなっていった。このようにしてLeitz社の売り上げが伸び悩み、経営に陰りが見え始めコスト削減されたモデルが6枚玉なので、全盛時代に製造された8枚玉は伝説と言われている。35mm f2(ズミクロン)で最初で最後の8枚構成でデザインも唯一無二のものだった。
Summicron 35mm f2 8枚玉 第一世代のスペック
ズミクロン 35mm f2 1st 8枚玉のマウントはL(577本、最短1m)、M、LM兼用が存在するが、今回は本レンズL/M兼用とMマウントの情報を記載する。店舗で複数のMマウントの重量を測定したところ個体により180gを超えるなどかなりバラつきがあったので重量は参考程度に。鏡胴は従来の真鍮製ではなくアルミ軽合金を使用して軽量化。
- 製造メーカー:Ernst Leitz GmbH Wetzlar (後のLeica)
- コード:M2用はSAWOM/11308、ビューファインダー付きM3用はSAMWO/11108
- マウント:ライカM
- 製造期間:1958-1969年
- シリアルナンバー:1,640,000~2,316,000
- 製造本数:20912本(M2用11355本、M3用9557本)
- レンズ構成:6群8枚ダブルガウス型
- 画角:64度
- 絞り羽根枚数:16枚
- 最小絞り値:f16
- 最短撮影距離:0.7m(M2用)、0.65m(M3固定式)
- 重量:150g~180g(M3ビューファインダー付きは225g)
- フィルター径:E39
- フード:12571(IROOA)、12585
- カラー:クローム、1963年からブラックも登場
- 中古価格:70万円~100万円
シリアルナンバー1853843が158g、2195559は181g(実測値)。他のシリアルナンバーの個体もそれぞれ重量は全て違った。
バージョン:初期の160万番台はML兼用。M2用はブラッククロームが少数本存在し、初期はfeet表記が赤色で後期は黄色。M2用ブラッククロームはとても希少。M3用眼鏡付きはコード番号11108(SAWOO-MW)、最短撮影距離0.65mでブラックペイントモデルが存在する。1950年代後半から1960年代前半はL39スクリューマウントからバヨネット式Mマウントへ以降する真っ只中で、L39スクリューマウントとL/M兼用マウントとMマウントが存在する。
Summicron 35mm f2 8枚玉 第一世代のレンズ構成図
初代8枚玉ズミクロンのレンズ構成図。8枚は多い。不格好。ハイコストの割にパフォーマンスが悪かったので6枚玉に変更されたか。要はコスパが悪い。
Summaron 35mm f2.8のレンズ構成図と比較すると8枚玉の方がガラスが分厚いく屈曲率が高いが設計思想はほぼ同一に見える。
Summaron 35mm f3.5のレンズ構成図。8枚玉はサンハンズマロンから進化したように見える。
もう一度8枚玉。ね、サンハンズマロンに似てるでしょ?
Summicron 35mm f2 8枚玉 第一世代のレンズ外観Review
シリアルナンバーから推測すると1961年製。Leitz全盛時代真っ只中。コーティングが美しい。
まぁ手放さないだろう。何度も言うが8枚玉は高描写ではないぞ。歴史的遺産。
そう、Ernst Leitz家の思想と社長の人格が素晴らし過ぎて尊敬しているからその当時のレンズが欲しいのだ。バルナックライカやM3も買って飾ろうかな。外観はf16の右側に小さい傷。それ以外は美しい。
八枚玉はライツカナダで設計された。同時期に発売されたSummaron 35mm f2.8はドイツ本社で設計された。ズマロンもほしい(いやいやいや)。
ML兼用なので初期の頃。見惚れる。こういうことなんだよな。この頃までのLeitzが人気の理由は。まさに伝統工芸品で観賞用としてもいける。Zeissは違う。あくまで大量生産の工業製品。シリアルも適当で当てにならない。
真鍮製ではなくアルミ軽合金で軽量化されている。
光学はクリーニング済みで美しい。
1つ1つの作りが丁寧でたまらない。ウィルド買収後はWetzlar工場は閉鎖され職人6000人が解雇されて人権が安いポルトガルに工場を建設してカメラの作りも簡素化されてドイツで組み立てて「Made in Germany」の刻印が押された。ね?全然違う会社なんだよ。経営者違うんだから。
Summicron 35mm f2 8枚玉 第一世代の作例 描写
撮影機材はSonyのフルサイズミラーレスカメラα7CⅡ。虹ゴーストが異常に美しい個体に巡り合った。どうせゴーストが出るなら美しい方がいい。
出会った。
なぞそこに立つ?いつも通り一瞬一瞬を切り取る。8枚玉だろうが何だろうがいつも一緒。
歌う女性。何を想い何を歌う?俺は何を想い何を表現してどう生きる?いつもこれでいいのか?と思っている。
俺にも学生時代があったなぁ。若いってキラキラしていいなぁ。いつからでも輝けるよ。自分次第。
シャドウが潰れてるかと思いきや粘り恐怖を覚える程イケてる暗部の描き方。
激渋。8枚玉は妖気がある。
手前の雑草のボケと曇り空のトーンがエモい。青空より曇り空の方が雲のコントラストや立体感、雲を透かして差し込む太陽の光が表現できる。
ビルと雑草が同じ高さに見えて心が動いた。子供の頃から思う。いつも自分だけ人間世界にいるような気がしない。
俺は確かにここにいる。皆何を想い、何を求めて生きているんだろう。
釣りをする男。写真を撮る男。あなたはどんな人生を送る?
何気ない日常が実は最大級の幸せだと気付くと今ある全てに感謝して生活できる。いつも今が一番若い。いつからでもやり直せる。
いつも今を覚えていたい。だから写真を撮る。
郷愁。写りの確認と言いながらいつものスナップ、日常。
マクロ側の解像力が意外に高かった。茎のトゲトゲまで繊細に解像。もう試写やめて数本のレンズと人生を歩んでいこうかとも思う今日この頃です。
接写能力が高い。元々の最短撮影距離は0.7mなので本来の最短撮影距離を超えているが、開発時のテスト段階で物理的にこのくらい寄って試写して確認してるのかもしれない。
この滲み。中距離スナップとマクロでジキルとハイド。
別日。今日も写真を撮る。
人類が皆平等で幸せになるなんて不可能だよ。平等と公平は違う。
自分は周囲からどう思われているんだろう。あそこに立つ釣り人は何を考えているんだろう。
あの男女二人は幸せなのだろうか。いつまで幸せが続くのだろうか。失った時を考えると恋愛ができなくなった。そうか、そうだったな。そういえば。
やはり何かを形にしていきたい。試写もレビューもなんか違う。作品を遺していきたい。人生と言う遺恨を。
両親に俺を産んでくれてありがとうと言いたい。でも、産まれてきたのが俺でごめんとも言いたい。
俺がもっとしっかりしていたら両親は幸せなのに。そう思って毎日生きていいのかと疑問に思いながら生きている。
ただそれだけ。
バイバイ。
Summicron 35mm f2 8枚玉 第一世代 描写の特徴Review
シャドウが潰れるのは早いが実は潰れていなく奥の奥までしっかり描いていて恐怖すら覚える程の心霊写真のような圧倒的インパクトを与える描写に身震いした。
- 一種の妖気を感じる
- ベトナム戦争の戦場で使用されたレンズか?
- 周辺減光がエモい
- 虹ゴーストが芸術的に美しい(個体差あり)
- 被写界深度が深くスナップに最適
- 焦点面(ピント面)の描写が繊細でボケもまろやか
- 1段絞ったf2.8(f4ですでに最高か)で急激に解像度が上がりそれ以降はあまり変わらない
- 発色は地味過ぎず派手過ぎずナチュラル
- コントラストが高くなった反動でシャドウが潰れやすくなった(表現に使える)
- 以前のLeitzと比べて時代の先を見据えた渋い写り
- ZeissのようでもなくLeitzのようでもない、これが伝説の8枚玉か
- 開放の遠景は完全に捨ててる
- ヘリコイド付きのマクロアダプターを装着して寄った時の描写力がエグく滲みがエモい
- 8枚玉という名の天然のエフェクト
ズミクロン8枚玉 第一世代で実写した感想ブログまとめ
筆者は非球面レンズを使用した現行のように高コントラストでカリカリした写りは苦手なので8枚玉に優しさが残っていて安心した。この当時のLeitz社や設計者、従業員、ライカを愛するカメラマンたち、注目する人々を偲び、大切にどんどん使っていきたい。
オールドレンズはそれぞれ特徴や持ち味が異なる。そのレンズの特徴や持ち味を把握し、それを活かした撮影スタイルで作品を作り上げていくことがオールドレンズの醍醐味だ。レタッチするとその醍醐味がなくなってしまうが、時としてスパイスを加えた方が味わいが出ることもある。
8枚玉はレタッチ不要で独特な世界観や空気感がある。筆者は「これが8枚玉か!」と唸った。しかし、高描写という意味ではない。むしろ写らない。人それぞれ好みがあるのでjpeg撮って出しの作例を参考にして判断してみてほしい。
やはりあの時無理して8枚玉を買ってよかった。大好きになった。
今回は以上。本日も素敵なオールドレンズライフをお過ごしください。