Leitz Hektor 28mm F6.3 レビュー作例 戦前ライカ広角オールドレンズ Leicaヘクトール2.8cm
Leitz Hektor 28mm F6.3 レビュー作例 戦前ライカ広角オールドレンズ Leicaヘクトール2.8cm。試写した感想は正直難易度が高く使い手を選ぶ上級者向けレンズだと感じた。ハマればノスタルジックなエモい写真が撮れるが、適当に撮ると平凡以下になる。試写して画像を選別している時にレタッチしないと撮って出しじゃ写らな過ぎる!と愕然したが、何としてもこのレンズの良さを引き出したいという想いが沸々と湧き上がってきた。
Leica Hektor 28mm F6.3とは Leitzライカヘクトール
Hektor28mmF6.3は1935年に誕生したドイツLeitz社の歴史的銘玉である広角レンズでライカのレンズの中で最も小さく薄く軽いレンズの1つ。ヘクトール28/6.3はライカの光学設計士マックス・ベレーク(Max Berek)が3群3枚トリプレットの発展型として設計開発した3群5枚構成のHeliar型。
本レンズは1955年にSummaron28mmF5.6が登場するまでの約20年間に渡り製造され、絞り値表記の違いやコーティングありなし、鏡胴ニッケル、クローム、留めネジの素材の違いなど複数のバリエーションがある。「Hektor」とはべレク博士の愛犬の名前。
Hektor 28mm F6.3のスペック
- 製作年:1935年~1955年
- 製造本数:9700本
- レンズ構成:3群5枚ヘリアー型
- マウント:ライカLスクリュー(LTM)
- 最大絞り値:前期は大陸式のF6.3、9、12.5、18、25で後期は国際式のF6.3-8-11-16-22
- 画角:76度
- 絞り羽根数:6枚
- 大きさ:全長12.5mm×最大径47mm
- 重量:110g
- 最短撮影距離:1m
- フィルター:A36
- フード:SOOHN
- カラー:ニッケル / クローム
- 市場価格:約120,000-200,000円(2022年7月現在)
戦後コーティングされている個体も存在する。
Hektor 28mm F6.3のレンズ構成
Hektor 28mm F6.3は前後貼り合わせ凸レンズを対称形に配し、その間に凹レンズを配置している。レンズ構成の分類としては、フォクトレンダーのヘリアー型とよく似ている。
一方のSummaron28mmF5.6は、4群6枚の対称型ガウス(オルソメター)型。ズマロンの開放絞り値は、ヘクトールのF6.3より半段明るいF5.6。ヘクトールからズマロンへの構成変更の目的は大口径化と周辺光量の増加が目的だったようだ。ヘクトールの絞り表示は大陸式でF6.3-9-12.5-18-25だが、後期型はF6.3-8-11-16-22の国際式絞り表示の個体もあるようだ。その後、レトロフォーカス型のSummicron-M 28mm F2 ASPH.が誕生する。
左がHektor28mmF6.3、右がSummaron28mmF5.6のレンズ構成図。
画像転用元:mediajoy
Hektor 28mm F6.3のレンズ外観
撮影機材はライカのビゾフレックス金字塔Elmar65mm f3.5マクロ。筆者が所有しているヘクトールは1940年製と推測されるレンズで大陸式絞りのクローム仕上げ。
Leicaで最も小型軽量なレンズの1つ。後継モデルとして復刻もされたガウスタイプのSummaron 28mm f5.6がありそちらもコンパクト。
ライカスクリューマウント。ライカL、L39、LTMともいう。本当に薄くて小さい。絞りF11で距離3m(9.84feet)に合わせるとパンフォーカスでスナップ撮影できる。
Hektor 28mm F6.3の作例review
撮影機材はSonyのフルサイズミラーレスカメラα7Ⅳ、クリエイティブルックは基本NTかBWでレンズの素性を探る。基本jpeg撮って出しだが今回は最小限のレタッチを施した。時間帯は早朝で天気は曇り。
ヘリコイド付きマクロアダプターを装着してのマクロ端。うん、ボケは期待できないね。スナップシューターだ。そして意外と解像してる。
川の水面に反射する木々が美しい。
マクロ端で撮影。葉の葉脈までしっかり解像している。撮影日の貴重な青空。やはり緑と青の色は癒される。
やっぱ神社っていいなぁ。ご先祖様や古来人と魂で繋がれる感じが好き。春日神社。
モノクロ。白と黒のコントラストがいい。周辺光量落ちと周辺像の流れ、周辺部の結像の甘さが曇り空とよくマッチしてノスタルジックでエモい雰囲気を醸し出している。
たんぽぽの綿毛をマクロ撮影。ヘリコイド付きマクロアダプターを装着してマクロ端撮影しているが意外とマクロ側の解像度が高くて驚いた。最短撮影距離は1mからの0.25m位。
ヘリコイド付きマクロアダプターを装着しているのでボケが大きい。
藤の花と掘っ立て小屋。あのベンチに座って昼間から酒を飲みたい。日本人は季節の花が大好き。四季があるって幸せ。
青楓?と言ってる人がいた。俗称で。葉脈まで結像。
塩船観音寺の案内板。時代ワープした。戦前のレンズだし当然か。
すでにお祭り感が出てた塩船観音寺のつつじ祭り。仁王門。早朝だからまだ誰もいない(いる)。
薬師堂。中間距離がエモい。モノクロの時もそうだが光の陰影を上手く表現できるとエモさ爆発してドラマチック感が増す。
曇り空から太陽光が若干覗いたサイド光で塩船観音寺の本堂を撮影。フレアーが画面全体を覆ってムードある雰囲気が出た。
フレアーがエモい。この時代のHeliar型レンズは被写体が遠距離の時にコマ収差(フレア)が発生する弱点がある。戦前ノンコートだし。
やはり光をうまく捉えるとこのレンズの良さが引き出せる。
つつじの雄しべにピントを合わせた。雄しべかわいい。
雄しべがかわいい。雄しべは人間でいう男の生殖器の陰茎だけどね。要するに動物も植物も雄と雌がある同じ生命体ということ。違うのは植物は大地のバクテリアの養分と雨水や太陽光、空気(酸素)など地球に存在する恵で命を奪わずに生きるが、動物は他の命を奪って生きる点。寿命の長さから見ても植物の方が上位。御神木とはよく言ったものだ。
梵字(サンスクリット語)がそもそもエモい。
筆者が所有している個体は1段絞るとF9で2段絞るとF11の大陸式絞りだが、感覚でピークはF9だと思う。
次はこのレンズで都会でスナップやスナップポートレートしてみたい。
エモ氏。周辺減光に酔える。若干樽巻収差ありか。
松の木の松ぼっくりのつぼみ赤ちゃん。松の葉とか松の実はスーパーフード健康食材として注目されている。
マクロ側で解像度の高さが確認できたことが意外だった。
赤の発色がいい。
クリエイティブルックSH。明瞭度低めのSHでもヘクトールの良さは残っている。
これは2段絞ってのf11だと思うが、すでに回折現象が起きかけてる気がする。開放f6.3と1段絞ってf9のみでいくべきかと思う。
塩船観音寺のつつじ祭りはすでに始まっていて営業時間は有料だが早朝は無料でガラガラ、たまにいる人も地元民しかいないから快適。
裏から見る薬師堂のお堂がエモい。
最小限のレタッチ。朽ちかけた階段がエモすぎ。
木の根っこはセクシー過ぎる。
で、最近の作例。Sony α7CⅡ、クリエイティブルックはBWでjpeg撮って出し。
モノクロだとエモく撮れる戦前ライカの不思議な広角オールドレンズ。
そうか、開戦直後に製造された個体だからたくさん戦時中の何かを撮ってきたのね、君は。いいよ。
いっぱい使ってあげる。100年後まだこの世に存在するかなこのレンズ。100年後に人類はまだ存在するかな、写真文化はまだあるかな。
曇り空と不忍池と蓮の花。ここはあの世。
この現実世界は実はあの世なんじゃないかとよく思う。今死んでるんだと。前世の罪を償う為に人間界にいるのだと。
にしてはこの世は素敵すぎるか。
子供の頃からよく地球と人類について考える。
悟りなんて開かず、何も疑問に思わずただ従っている方が幸せなのかもしれない。
気が付くと上野か新宿にいる。前世の記憶か。迷い人。
どうしても現代社会が合わない。
あの世とこの世のゲート。ラビリンス。ハイライトが滲んでる。いいなHektor.
俺はいつどこでどんな死に方するんだろう。って考えると今頑張って笑って死にたいよなと思う。
バイバイ。
Hektor 28mm f6.3を試写した感想review
新旧の作例と感想が入り混じったレビューになると本当にラビリンスなのだが、最新のレビューとしてはモノクロがマジでイケてる。ハイライトの滲みがエモい。性能とか解像度とか関係ない次元。
で、古いレビューは、冒頭でも述べたがHektor28mmF6.3は上級者向けの広角オールドレンズだと感じた。レンズの旨味が出るスイートスポットが狭く、いい意味で適当に撮っても素晴らしい画が叩き出るOrion-15 28mm f6と比べて、ヘクトール28mm適当には適当に撮っても中々雰囲気のある画が撮れない。だから工夫する。今回は限られた時間の中で早朝の試写だったが、冒頭で述べた「うまくなるレンズ」というのはそういう理由だ。
で、今読むと、ふむ、なるほど、それも一理あると思った。
Hektor 28mm f6.3写りの特徴まとめ
- モノクロで本領発揮、カラーだとクソ(言葉選びなさい)
- 開放は周辺結像甘い
- 光源(ハイライト)が滲むご褒美
- 1段絞ると周辺結像も改善されコントラストの付き方もよく渋い写りになる
- 曇り空でも開放で画面全体をフレアーが覆う
- ドラマチックな周辺減光
- レンズのスイートスポットが狭くて難しい
- ツボにハマるとイカした画が撮れるがハマらないと平凡以下の写り
- 使い手のスキルが浮き彫りになる広角オールドレンズ
- イニシャルDのハチロク
まとめ
性能はOrion-15 28mm f6の方が上。京セラContaxのBiogon 28mm f2.8Gは最近の写り。戦前Hektorは唯一無二の写りなので他の広角レンズと比較はできない。ライカのヘリアー型Hektorという愛おしさ。
このレンズで作品作りができたら腕が上がると直感で感じた。筆者お気に入りの広角オールドレンズ、ロシアのOrion-15 28mm f6と比較するとスペックは似ていても写りの性質は全く異なると気付き、非常に勉強になった。広角レンズは設計が難しく、Hektor28mmは戦前の広角レンズとしては非常に優秀で歴史的銘玉である。
「解像度」や「性能」を「描写力」が超越するという事実が体感でわかってきた今日この頃。
今回のレビューは以上。本日も素敵なオールドレンズライフをお過ごしください。