FUJINON 55mm F1.8 初期型M42 Review作例 フジノンおすすめオールドレンズ
FUJINON 55mm F1.8 初期型のReview作例 前期と後期の見分け方 M42。中古相場は数千円と激安だがノスタルジックでエモいレトロな写真が撮れるオールドレンズだ。筆者が好きな6枚ガウス。
FUJINON 55mm F1.8 初期型M42 オールドレンズ外観Review
撮影機材はα7ⅣとKodak Ektar 45mm F3.5。フジノン55/1.8は小さい割に金属鏡胴とレンズの重みがいい感じ。筆者が所有するこの個体は初期の頃なので金属製。重量の実測値は188g。
黄変してるから放射性物質を含むトリウムを使用したアトムレンズか?だとしたらよく写るしノスタルジックな描写になる。今回の撮影機材であるエクター45/3.5の写りも相当いい。
正面から。2段絞ってF5.6。
ついEktarの写りを楽しんで時を忘れた。カメラは無心になれるからいい。
黄変。このアトムレンズがいい味出す。太陽光や紫外線に数日間晒し続けると黄変が弱まるらしいが、このレンズは年月を経て黄変するのだからその写りを楽しもう。年月かけないとこの黄変は出ない。1つの価値。アトムレンズの危険性は常に肌身離さず持ち歩いていると害があるというレベルのようだ。
FUJINON 55mm F1.8 M42初期型とは
初期型は1970年にST701用のキットレンズとして誕生した個体。当時の富士フィルムの代表的標準レンズ。レンズ構成は4群6枚ダブルガウス型。FUJINON 55mm F1.8はマルチコーティングが施されたEBCが有名だが、今回レビューしている初期型はまだモノコーティングの時代のレンズ。ピントリングと銘盤、鏡胴共にオール金属製。
中期型(前期型)は1972年にST801用の標準域キットレンズとして富士フィルム独自のマルチコーティングEBCが施されたモデル。鏡胴のデザインや素材も変更され、ピントリングはラバー製、銘板と鏡胴はプラスチック製。
後期型はST901用の標準キットレンズとして発売され、レンズは中期型とほぼ同じものと、なぜかモノコーティングに戻ったモデルが存在し、モノコートの個体が実質、後期型となる。
初期のモノコーティングは個体数が多く流通量が多い。人気があるのはEBC(Electron Beam Coating)」が施されたモデルで、生産量が少ない為かあまり見かけない。ちなみにバブルボケで有名なのはFUJINON 55mm F2.2 M42。
FUJINON 55mm F1.8 M42初期型 コーティングありとノンコートはどちらがいい?
コーティングありとなしのレンズはどちらがいいか。結論は、どちらも長所と短所がありそれぞれ素晴らしいのでどちらとも言えない。どんな写りを求めるかによる。
コーティングが施されあらゆる収差が抑えられたレンズは解像度が高くパキっとした描写を見せるが、その反面、収差を活かした淡い表現や滲み、ゴーストやフレア、個性のある激しいボケなどが失われることもある。
諸刃の剣、作用も反作用も陰陽表裏一体。どちらもそれぞれ良さがある為、好みや状況による使い分けをするといい。高解像度を求めるならマルチコーティングありの個体、レトロで淡い描写を楽しみたいならノンコートやシングルコートの個体。
また、例えば、11層ものマルチコーティングが施された「EBC X FUJINON 55mm F1.6 DM」はクセノタール型の限界値である絞り値F2.8を大きく超えた設計の為、様々な収差が画面の四隅まで暴れ回る。しかし、ダブルガウス型の様なピーキーさは少なく扱いやすいクセ玉だ。
参考元:古レンズの風に吹かれて
FUJINON 55mm F1.8 M42 初期型と前期型の違い見分け方
ノンコートのFUJINON 55mm F1.8初期型は厳密に言うと2種類あり、ややこしいのでここでは初期型と前期型と呼ぶことにする。違い見分け方は、初期型は絞り環がシルバーで後期型はブラック。どちらも金属製でレンズ銘板やピントリング、鏡胴もオール金属製。筆者が所有しているのは絞り感がシルバーの初期型モデル。
フジノン55mmF1.8初期型
フジノン55mmF1.8前期型
FUJINON 55mm F1.8 M42 中期型
その後、1972年にはST801用のキットレンズとして富士フィルム独自のマルチコーティングが施されたEBCが誕生した。ピントリングはラバー製で銘板や鏡胴はプラスチック製。金属製ではなくなった理由はマルチコーティング化でかかったコストを調整する為と軽量化の為だと思われる。
フジノンEBC55mmF1.8 中期型
FUJINON 55mm F1.8 M42 後期型
1974年にST901用のキットレンズとして2種類のフジノンレンズが用意された。ST801とほぼ同じモデルと、なぜかモノコーティングに戻ったモデルが存在する。共にピントリングはラバー製でレンズ銘板と鏡胴もプラスティック製。
フジノン55mmF1.8後期型
画像転用元:出品者のひとりごと…
FUJINON 55mm F1.8 M42 初期型のスペック
- 発売年:1970年
- レンズ構成:4群6枚ダブルガウス型
- マウント:M42
- 最小絞り値:F16
- 最短撮影距離:0.45m
- 絞り羽根枚数:6枚
- フィルター径:49mm
- 重量:188g(実測値)
FUJINON 55mm F1.8 M42 初期型のレンズ構成
FUJINON 55mm F1.8 のレンズ構成(エレメント)は4群6枚のダブルガウス型。1897年に発明されたレンズ構成ダブルガウス型は本来左右対称なので左右対称を崩した時点で厳密に言うとダブルガウスではないと思う。初期のPlanarは完全対象型4群6枚ダブルガウスで徐々に進化した。ただ、4群6枚は本来のダブルガウスのエレメントなので昔のダブルガウス型オールドレンズに近い写りをするのではないかと期待が高まる。
FUJINON 55mm F1.8のレンズ構成図
画像転用元:出品者のひとりごと・・
FUJINON 55mm F1.8 M42 初期型の購入経路と購入した動機
オールドレンズを始めたばかりの2021年12月に6000円で購入。本当はクセノタール型のEBC X FUJINON 55mm F1.6が欲しかったが中々見つからなかったので、明るいF1.8で初期型のノンコートでレトロな描写を期待して購入した。正直当時はよくわかっていなかったが「安い」と思ったことは覚えている。
金属製で小さい割にズシっと重みがあり高級感を感じる。ボディ側に重心があるようで装着した時は188gという重量よりさらに軽く感じる。もちろんマウントアダプターの重量も入るが。別にもったいぶってはいないが作例に入る。
FUJINON 55mm F1.8 M42 初期型 作例
撮影機材カメラはSony α7C 。レンズの素性を探る為クリエイティブスタイルはNTかモノクロで未加工jpeg撮って出し。
f5.6か。周辺減光エモい。ザラつき感、トーン、フィルム時代のエモさ爆発。周辺はやや甘い。昭和レトロでノスタルジック。これ銘玉じゃないか?モノコートいい。
年月を重ね時代を重ねてきたものに風情や情緒を感じる。粋な江戸っ子かよ。
映画のワンシーンのようなドラマチックな雰囲気。エモい。
この写真は春なのに秋から冬にかけてみたいな雰囲気が好き。シャドウは敢えて持ち上げていない。
菜の花と戯れる蜜蜂さん。ヘリコイドアダプター装着して寄るとピントはシビアになるがかなりボケる。
頭のてっぺんから足の指先まで花粉にまみれて菜の花を抱きしめて花の蜜を吸う蜜蜂さんに胸キュン。蜜蜂が必死に巣に集めたハチミツを人間が強奪して金儲けの為に売るんだもんな、人間って残酷だよな(僧侶か)。
カラーコーンから生えていたその辺でよく見かける植物。たくましい。後ボケが凄まじい。
ノスタルジックというかレトロというかエモいというか。 周辺部のざわつく収差が好き。やはり4群6枚のダブルガウスは繊細で好き。モノコートもよき。
モノクロもカラーもいい。
時代を見まがうような写真が好き。洗濯物の長袖が逆さで万歳してるのがかわいい。脇のところ乾きにくいからね。頭いいなこの家の人。
桜の絨毯がいい。てかモデルルームになるぞこのお屋敷。
ざわつきと滲みがいい。桜や草木のざわつきや滲みも塀の潰れ切らないシャドウも家屋やカーテンの滲みも周辺減光がわかる青空も画面に広がる色合いのコントラストもいい。目に飛び込む情報が多すぎるかもしれないが水彩画でキャンバスに描きたい構図。
トンネルを歩く熟年夫婦。トンネルの冷たくひんやりしたコンクリートの質感が伝わってくるようだ。ハイライトが飛びきらずシャドウの連なりもいい。快調の連なりなどが確認しやすい一枚。
何気に好きな1枚。歩道橋高架下。コンクリートの劣化で時間軸と静けさを感じる。
木蓮(モクレン)。花びらのツヤや質感が伝わる。立体感もある。この花びらをお酒に漬けて飲んだらうまいかな。そういう漢方酒あるよね。種は梅酒とか杏露酒とか有名だけど金木犀や桜など花びらを漬けたお酒もおいしいし薬膳効果もある。
ヘアーサロンの看板。画面全体がくすんだ感じがいい。トリウムの黄変の恩恵か。
落ちたばかりの花びら。盛者必衰の理。生きたまま死んだ感じが切ない。
バイバイ。
FUJINON 55mm F1.8 M42前期型のの写りの特徴レビュー感想
数千円で購入できるし玉数も多いので希少感はないが、相当いいレンズだと感じた。4群6枚の典型的なダブルガウス型でモノコートが筆者好み。とは言ってもどんなレンズでも持ち味があるので、そのレンズがどんな描写してくれるか試写して自宅で写りを確認してセレクトして…と戯れる時間が好き。
だから極論どんなレンズでも楽しめるしレンズの持ち味を引き出せばそれなりにいい写真が撮れる。あまり調べずにオークションなどで数千円で購入したオールドレンズや中古カメラ屋のジャンクコーナーで遊びで購入したレンズが意外といい写りをするとそれだけで楽しいし、設計者やレンズ構成などを調べてみると「なるほど」と納得することもある。
本レンズはオークションなどで数千円で購入可能。また、11層のコーティングを施したEBCも見つかれば試したいが、筆者はノンコートやシングルコートの古くさいレトロな描写が好み。もちろんマルチコーティングのオールドレンズもいい写りをするので所有している。
まとめ
フジノン55/1.8はフィルムライクでノスタルジーな古典ダブルガウスっぽい描写がレトロで素敵なオールドレンズ。ド派手なゴーストがバンバン出る訳でもない為、構図やシチュエーション、タイミングに集中できるので個人的には使いやすかった。
うっすら滲み、画面全体のほんのりフレア、全体の発色が薄く濁る感じ、大きくとろけるボケ、状況によりボケが崩壊、二線ボケも発生する。様々な収差が楽しめてこれで6000円は激安でコスパは非常に高いと。レンズが被写体を呼ぶこともある。
今回のレビューは以上。本日も素敵なオールドレンズライフをお過ごしください。