Harold Dennis Taylor ハロルドデニステーラー クックトリプレット開発とクモリ玉でARコーティング発明
Harold Dennis Taylor ハロルドデニステーラー クックトリプレット開発とクモリ玉でARコーティング発明
Taylor and Hobsonといえば弱点だらけで歴史に埋もれかけたルドルフが発明した元祖Planarの対称型を僅かに崩してを復活させたHorace William Lee のOpicやハリウッドを座巻した伝説のシネレンズSpeed Panchroが有名だが、デニステーラーが発明しT. Cooke Sonsからライセンスを受けて製造したトリプレットの爆発的ヒットがあったからこそ、後のレンズ開発に繋がったのかもしれない。今回はそんなデニス・テーラー博士のお話しだ。
ハロルド・デニス・テーラー(Harold Dennis Taylor)は1862年7月10日ハダースフィールドで生まれ、1943年2月26 日に亡くなった。デニス・テーラーはイギリスの光学設計者かつ発明家であり、特にCooke Triplet(クック トリプレット)の発明で有名だが、他にも約50件の特許を取得している。
テーラーはセント・ピーターズ学校で建築の勉強を専攻し卒業。しかし、ヨーク州にある最高品質の光学機器、特に望遠鏡を得意とする企業、Thomas Cooke & Sons(トーマス・クック・アンド・ サンズ)に就職し、後に光学部門のマネージャーやチーフデザイナーの責任者になった。
しかし、クック社は写真レンズを製造する気がなかったので、設計図をレスター州のTaylor Taylor and Hobson(テーラー・テーラー・ホブソン社(TTH) , 偶然にも同名だが無関係)に渡し、快く引き受けてもらえた。さらに、TTH社はテーラー博士本来の勤務先である「Cooke」をレンズ銘に入れて敬意を表した。
そう、デニステーラー博士はテーラーホブソンズ(TTH)社の人間ではないし、クックトリプレットもテーラーホブソンズの発明ではなく、CookeSans社からライセンスを受けてTTHが製造しただけなのだ。しかし、Cooke社はレンズの製造をする気がないので他社に依頼したという。ややこしいわ。
1892年に3枚構成のアポクロマット望遠鏡レンズでイギリス特許17994と17992を取得し、翌1893年にはクック トリプレットを設計しイギリス特許1991、1993、22607、22693を取得した。
1896年、曇ったレンズの方が新しく磨いたレンズより光を多く通すことを発見して反射防止膜ARの基礎を築いた。1906年には著名な書籍、応用光学大系を出版し、1933年にはダデル メダルと賞を受賞。1935年には王立写真協会からプログレス賞を受賞した。
デニス・テーラーは1888年7月24日にシャーロット・フェルナンデス・バーフと結婚し、娘はドリス、息子はレスリーとエドワードで、エドワードは光学デザイナーとして活躍した。デニス・テーラーはノースヨークシャー州コックスウォルドで退職直前に亡くなった。
筆者がよく口にする「クモリ玉はよく写る」は嘘みたいな本当の話しだが「特許」という根拠がある逸話なのだ。もちろんクモリ具合にもよるし、ひどいクモリ玉はソフトフォーカスのように写ることは事実だ。しかし、全体的に薄っすらクモっている程度であれば、中々味がある写りをすることも確かだ。
この機会に、訳ありや難ありとして安く売られているクモリ玉を敢えて購入して楽しんでみてはいかがだろうか。デニス・テーラー博士に敬意を表しながら撮影したらクモリ玉で素晴らしい写真が撮れるかもしれない。
ソフトフォーカスに写って後悔しても筆者は一切責任取りません(笑) 最近購入したジャンク級大クモリ玉のM-Rokkor 28mm f2.8の作例を参考にしてもいい。極端なんだから皆。ほんの少しのクモリの話しよ。筆者は大クモリで格安レンズを試してみたかったの。
Mロッコールは28mmという広角でf2.8という明るさのオールドレンズで、かつ小型軽量なレトロフォーカス型という貴重な選択肢だが、超絶クモリやすいので状態がいい個体が見つからず、購入を保留していたので、思い切って思考のメーターを振り切って買ってみただけだ。
今回は以上。本日も素敵なオールドレンズライフをお過ごしください。
参考文献:1943年Nature(ネイチャー)151号442ページ