Canon 25mm f3.5 LTMレビュー作例 キャノンの広角銘玉神オールドレンズ トポゴン型 ライカL39マウント
Canon 25mm f3.5 LTMレビュー作例 キャノンの広角銘玉神オールドレンズ トポゴン型 ライカL39マウント。
上品な滲みはLeicaのズミルックスのようであり、コントラストの高さや力強い発色は往年のZeissのようであり、光の印影の捉え方や美しいトーンは京セラContaxのBIogon Gのようであり、潔いダイナミックな周辺減光はRicohのGRのようでもある。
25mmという超広角がたった5枚で描くこの美しさは驚愕。断言しよう。本レンズは広角の神オールドレンズでありキャノンの銘玉であると。
Canon 25mm f3.5 L39のスペックReview
- 発売年月:1956年(昭和31年)12月
- 発売時価格:32,500円
- レンズ構成:5群
- レンズ構成:5枚
- 絞り羽根枚数:6枚
- 絞り値:F3.5~F22
- 最短撮影距離:1m
- フィルター径:40mm
- 最大径 x 全長:48mm x 15mm
- 質量:138g(実測値)
Canon 25mm f3.5 L39のレンズ構成Review
Canon 25mm f3.5 L39のレンズ構成は5群5枚のTopogon型だ。トポゴン型は4群4枚だがCanonの25mm f3.5は無限遠曲率の特殊光学ガラスを使用した薄い平面レンズをボディ側の最後部に配置して収差を補正している。
画像転用元:Canon
Topogon型とは
トポゴンには2つの源流があると言われている。1つはハイペルゴン絞りを挟んで半球状の薄いメニスカスで構成された広角用レンズ。ハイペルゴンはゲルツ社のエミールフォンフーフが1900年に設計したが複雑な収差を補正できなかったのでF20~F40まで絞り込んで使われていた。さらに周辺光量の低下が大きかった。もう1つはオルバンGクラークが設計した4群4枚のダブルガウスでPlanarの原型でもある。
1933年にCarl Zeissのロベルトリヒターがハイペルゴンとダブルガウスのレンズ構成を組み合わせてTopogonを設計した。初期のトポゴンはF6.3と暗かったが動かない被写体である建築撮影に使用されることが多かった為特に問題はなかった。画角が広く歪曲が少なかった為航空写真用レンズとしても重宝された。ただし、ハイペルゴンと同じく周辺光量の低下が大きく画面全体の明るさを均一に保つ必要があった。そこで周辺から中央に向かって濃くなるNDフィルターを使用するなどして対応していた。
トポゴン型のレンズ構成は1930年代に旧ソ連(ロシア)にも提供され、Orion-1A 20cm F6.3(30x30cm大判フォーマット)や1937年にはOrion-2 150mm F6.3(18x18cm大判フォーマット)が開発されて両レンズとも航空測量に使用された。1944年には筆者も所有しているOrion-15 28mm F6が登場した。
1950年にContaxⅡAやⅢA用にTopogon 25mm F4が登場した。日本でトポゴン型を採用した広角レンズは日本工学のW-Nikkor 25mm f4や本レンズCanon 25mm f3.5 L39などがある。アメリカではボシュロム社のMetrogonがトポゴン型を採用している。
Canon 25mm f3.5 L39のレンズ外観Review
開放で絞り羽根の形が6角形のまま。デフォルトでこの仕様らしい。
レンズはたった5枚で鏡胴もかなり小さいがこの重みは真鍮製だろう。そしてプラスチック製ではないガラスレンズの重みがズッシリしていて中身がぎっしり詰まっていてラグジュアリー感がある。
25mという焦点距離だがレンジファインダー用のライカLマウントなので最短撮影距離は1mと絶望的に寄れないが、ヘリコイド付きマクロアダプターを装着すると感覚では30cm位まで寄れる。後の作例を参考にしてみてほしい。
筆者はいつも念入りにリサーチして慎重に買うのでなんとか実勢価格より安く入手できてラッキーだった。状態がいいと10万円近くで売られている。トポゴン型は希少なのでやむなしか。
Canon 25mm f3.5 L39の作例Review
撮影機材はSonyのフルサイズミラーレスカメラα7Ⅳ、ほぼjpeg撮って出し、基本NT。ピントリングと絞りリングが同時に回りやすいのが唯一の難点。
光の印影やトーンが美しい。RICOH GR 21mm f3.5に似てると思った。
その反面、品のある滲みはライカの球面ズミルックス35mmF1.4や貴婦人50mmf1.4のよう。
空の青の力強い発色や木々の葉に当たる光の印影のトーンやグラデーションを25mmという広角をたった5枚玉で描く。
モノクロで描く白と黒も秀逸。
寄ってもよし。
最短撮影距離1mが焦点工房のヘリコイド付きマクロアダプターを装着してさらに寄ってこんな感じ。充分でしょ。しかも25mmでこのボケ感。圧倒的キャノン砲。
なんでもできるぜこのオールドレンズ。マクロアダプターを持っているなら本レンズの場合、最短撮影距離1mはハンデにならない。
葉桜の美しさに酔いしれる。
もう誰も振り向かない葉桜がとても美しくて独り占めした晴れた日の朝。
2段絞ると「ZeissのContax Biogon Gかよ!」っていう突っ込みが入る程濃厚で力強い発色とコントラストを見せる。
最後部に配置された無限遠曲率の特殊光学ガラスが相当な魔力を秘めていると想像する。
それより青梅の庭師の腕前。
宮原夢画を意識してる訳ではないと言ったら嘘になるというか別に嘘にならないというか。
この深い空の青と周辺減光に陶酔する。
最高に大好きだぜキャノン25/3.5L。希少なトポゴン型に変態的な特殊ガラスを最後部に配置した天才的な発想から生まれた唯一無二のレンズ構成の本レンズは値上がり必死だと思う。
Canon 25mm f3.5Lの写りの特徴Review
- ハイライトの滲みがライカの球面ズミルックスや貴婦人のように美しい
- Contax Biogon Gのような美しいトーン
- 力強い発色と高いコントラストが往年のZeissのよう
- 潔い周辺減光がRicohのGRのよう
- Topogon型特有の周辺結像が甘くノスタルジック感がある収差
- トポゴンなのにトポゴンらしくない究極的な完成度の高さが神レベル
- 最短撮影距離1mだがヘリコイド付きマクロアダプターを装着すると20cm位まで寄れるのでボケが意外と大きい
- 開放F3.5で絞り羽根が全開にならず六角形だが中間距離は円形を保っている玉ボケもあるが最短撮影距離を超えると六角形になる
- 逆光に強く汚いゴーストは発生しない
- 小さい紫ゴーストやシャワーゴーストが状況により多少発生し画面全体を覆うフレアーも僅かに発生する
- 使いやすい25mm超広角オールドレンズ
- 中央部の解像度は高い
- 発売当時25mmでは世界最高の明るさを誇るレンズだった
- 自信を持っておすすめできる広角オールドレンズ
- 筆者の感性に合っていて目で見た映像に近い描写
- 広角の割にピント面が浅い
- 開放で中央部以外の結像がかなり甘いので被写体を真ん中に配置してポートレートなど向いているかも
まとめ
大好き。いや、60年以上昔の広角オールドレンズが現代に見劣りしない完成度の高さと古きよきオールドテイストも残っている唯一無二の日本が誇るキャノンの銘玉神レンズであると無責任に独断と偏見で断言しよう。唯一の欠点はピントリングと絞りリングが同時に回りやすいという点。
撮る側との相性は当然あると思うが筆者は痒い所に手が届く優秀な広角オールドレンズだと感じた。24~28mmくらいの広角はスナップやパンフォーカス撮影、風景、建造物、なんならポートレートもいける万能な焦点距離だ。
そして小型軽量という点は非常に有利であり大きくなりがちな広角レンズにおいて貴重な選択肢でもある。優秀な広角オールドレンズはそれ程多くはないので(割とある)を掘り下げていくと面白い。
今回は以上。本日も素敵なオールドレンズライフをお過ごしください。